fintech は知ってますよね?じゃあ、regtechは?

世の中的に、fintech と言う言葉があちこちで見られるようになりました。大別すれば、ブロックチェーンを元にした分散型データベースと認証システムによる取引情報の非中央集権化のような話と、サービス間を APIで結合させることで情報のマッシュアップ/効率化を図る話、そして AIなどの大量の情報から周期性などを見出して(将来)予測などに利用する話、という中で、今年の初め頃に、イギリスのfintech 企業が日本での投資家やサービスの利用者の可能性を探ろう、ということで大挙して来日し、英国大使館などでプレゼンを行う機会がありました。

fintechというとこんなイメージ?(笑)
私もお手伝いしているAIMA Japan でも英国大使館と協賛でそのショーケースの一セッションを行う、という機会を得たのですが、その横で、そちらに参加する一社が英王室領ジャージー島からくる、ということでジャージー島から紹介するということでショーケースに先立ってお会いしたのが、前述で言う所の2番目にあたり、情報サービスをマッシュアップするタイプのfintech企業さん。実際にそこは某アジアの巨大な海外の機関投資家のリサーチチームが情報蒐集に当たる際にリサーチャーの個別のスキルで行うことでの情報ソースや情報量の不均一性などから統合できるようなサービスが欲しい、ということで開発されたもの、という説明を受けて、面白そうと思う一方で、多分国内の機関投資家さんで使いきれないだろうなぁ(多分、一部の銀行さんくらいじゃないかな)という印象を受けたのでした。

fintech というより regtech

そんな中、ショーケースを見ていると、ジャージー島の彼はその後の大型機関投資家との面談があるから、ということで先にやってショーケースから去っていったのですが、その他に AIベースでのファンド商品の選別サポート(というよりはある意味ラップファンドのAIによるセレクションを行うサービス)などの上記のそれぞれに対応するサービスの紹介があった中で、個人的に興味を持ったのが、ネットワークに参加するコンプライアンス担当者や法務関係者が世界中の金融行政から上がってくる新しい法改正や条例等を共有しながら、自国での対応等について検討するようなクローズとな情報共有ネットワークと、FATCAの報告書等の作成の支援ツール、という、とてもコンプライアンスなサポートに特化したものばかり、でした。

前者は、すでに某グローバルな法律事務所が法務的アドバイスを提供するので、他の弁護士さん的には入りづらい環境である一方、(特にグローバルな)運用会社のコンプライアンスや法務担当からすれば情報蒐集に付け加えて初期段階での法務的アドバイスのある状態での理解を深めることが出来、かつその後の法規制の解釈なども参加者である実務担当者からのフィードバックを得やすい、という意味で SNS ライクな成長と経験値を積み上げる集合知になっていくのだろうなぁ、という予感がしました。

後者ですが、実際、その後再来日した際に、クラウドベースのものもある横でモックアップ版のスタンドアローンのプログラムでデモを見せてもらいましたが、質問方法に条件付けの概念を入れることで、W8-BEN-eフォームのような(前述のリンク先を見て頂くと分かるように)広範囲に渡る対象者をカバーするべく作られたものを作成する際に、その作成者に対して必要最低限(かつ過分にならない)とする情報を割り出し、効率的に作成できるようにするものでした。しかも、このシステムはかかる情報の入力後も管理し、また、その他本人確認のために必要とする資料のpdfも同様に管理することで、複数ファンドなど同種の情報を複数回利用する際の効率化をはかることができる、ということが意図されてデザインされています。イメージとしては、ファンド・アドミが投資家と運用者と言ったファンドの関係者のdue diligence (本人確認並びに身元調査)を行う際に一旦取得した情報を将来にわたって再利用できるようにすることし、また、関係者も適時自分の情報の更新を自分のタイミングで行うことが出来るようにすることで、関係者のdue diligence に関するストレスを減らそう、という使い方が出来る、というものです。

しかも、これ、情報の提供についてはそのシステム内の再利用だけに限らず、そのシステムを利用しない関係者への開示に対しても秘密保持をしながら出来るようにする、ということも考慮されています。

このところ私が FATCA/CRS のために方々で本人確認関連資料を集め、それに基づきとある資料についてそのうちのどのカテゴリーに当てはまるからどのような情報を集めて記述し、という手間がかなり自動化されることが期待できるものでした。

しかも、一応コンセプト的にはFACTA対応をメインに設計されているのですが、上記の質問方法に条件付けを入れられる、ということで、例えば、日本の金融商品取引法第63条特例業務に基づいて組成される私募ファンドへの個人や非適格機関投資家に当てるプロであるかどうか、という質問と書類作成にも(ちょっとした開発がユーザーサイドで必要になるとはいえ、むしろその程度で)応用可能ということですので、これは大手アドミさんに個人的にはぜひ導入して頂き、ファンドのスポンサーなどの情報提供の省力化のために欲しいシステム、とオススメしたいくらいのものです。

このような、今時のITシステムと法規制環境への対応の組み合わせを regtech = regulation + technology というそうなのです。イギリスあたりが先行していると言われていますし、確かに日本でこの手の regtech なサービスってあまり見ない気がします。

個人的にこういうのが投資環境を変えるインフラの進化と評価してほしい

とはいえ、こういうサービスが増えると投資の際の(言い方は悪いものの)本源的でない部分(要はマネーロンダリングやCRS/FACTA対応のための本人確認であったり、新しい法規制の導入のフォローであったり)にリソースを裂かずに済む、という大事なところだと個人的には思うのですよ。

ぶっちゃけ、ディープラーニングでパターン認識して将来予測をする、なんてトレンドフォローのCTAが昔からやってきているのをデータソースを代え、方法論の切り口を変えた程度なので(爆)手法を変えただけの発想の目新しさがない、んですよねぇ。むしろニュースに上がってくる企業情報に対する株価の反応度を使って、的なテキストマイニングな方に注目が集まるべきなのに、AIという言葉だけでまた踊らされてないかな、と心配になったります。

まぁ、言っている自分が何かサービスを思いついて立ち上げればいいのでしょうけどねぇ。レギュレーション・チェンジへの対応かぁ。。。知恵を求められます。

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