BRICs Watch - August 2008

4/27/2009
(注) この記事は 2008年9月28日の記事の再録です。

ということで、今月もあと3日で終わりというところで、やっと書き上げました(苦笑)

しかし、2週間前の日曜日から金融の世界は大きく様変わりしてしまった感がしますが
皆さんにはどう映っているのでしょうか。社会インフラとしての金融機関の信頼が大きく
損なわれていると映るのか、それとも単に金儲けのつけが回って来ただけ、と取られるのか。

いずれにせよ、少なくとも、今この瞬間はあちこちで聞こえてくるものは
「現金がすべてで信用取引きは出来ない」
という、あれ?この間のイスラム金融的な世界になっているようなのです。

考えてみれば、90年代の終わりの日本での証券会社や銀行の破綻のときも
相手が倒れるリスクが高いように見えるから貸せない、という流れになっていた
訳ですが、それがアメリカやヨーロッパでも起きつつある、ということですから
私たちは過去から学ばないといけない、のかもしれません。

ええ、cash is king だからvalue 株を今のうちに仕込んでしまうとか(笑)

いろいろとやることは多いかもしれませんが、信用力が少なくとも私たちの資本経済の基本に
あるということを再認識する月であったことでは間違いありません。


で、BRICs はと言えば。。。

8月のBRICs 市場は、全般に対ドル安基調に動く展開となりました。一時期のような信用不安による資金逃避ではなく、商品市場の影響に伴う国内インフレの動向、地政学的リスクや景気対策などの国策主導による市場操作といった要素が大きく影響したひと月でした。

ブラジルレアルは月初に一旦は 9年ぶりとなる対ドル高水準に到達したものの、国内株式が弱気相場に入ったことで月初11日間値を下げましたが、国営の石油会社、ペトロブラスの前四半期の好調を受けて反転し、月末最終営業日に先物取り引きの決済日ということでわずかに値を下げたものの、商品価格の上昇を背景に月次で 1.5%ほど上昇しました。年初からでもおよそ 9.1%の上昇をしており、最も取引の多い16通貨の中で最も高い上昇率を見せております。ロシアでのグルジア問題によるアメリカとの対峙によって、米ドルが相対的に弱くなったことに付け加えて、ブラジルの輸出主要品目の一つである原油の価格も上昇したことが影響しております。

8月末時点の IPC-S、ブラジル12都市での過去30日間の消費者物価指数の上昇率は 0.14%と、前月末の 0.53%に比べて大きく減速しました。月中のインフレの目安となる、IPCA-15指数も 0.35%と7月の 0.63%から大きく減速しました。さらに、インフレの目安となる IGP-M価格指数も今月 2年ぶりに -0.32%と下落を記録しました。中央銀行の過去3回連続での政策金利の引き上げと食料品価格の上昇率の減速により年間インフレ率も政府目標である 4.5% の上下 2%以内、を達成できる可能性が出てきました。

7月の財政赤字は 66.7億レアル(41億米ドル相当)を記録しました。前月は 58.3億レアル、前年同月でも 61.8億レアルでした。

政策金利の上昇に伴い調達コストが上がったことから、7月の銀行の貸し出し伸び率は 2月以来の低水準に終わりました。


ロシアルーブルは、対ドルでは9年半ぶりとなる 月次で -4.8% の大幅下落を記録しました。原油価格が 7月11日の最高値から18%下落したことによりルーブル建てのロシア投資と行うことの主な魅力でなくなったこともある一方で、グルジアでの、5日間戦争を端に発した問題の発生以来西側諸国との関係悪化を嫌ったことで、投資家は 300億米ドルを国外に引き出したという試算も出ております。ドルとユーロから構成される通貨バスケットに対しても一旦は 6年半ぶりの高値を記録したものの月間で 1.6% 下落しており、数ヶ月前のような一方向に動く市場ではもはやなくなっております。ロシア株式も、米ドル建ての RTS指数がグルジア紛争が開始した 8日以降で 14%下落し、2年来の安値圏にはいりました。

8月末の企業による所得税の納税を控えての金融システムの流動性不安の解消のため、中央銀行は26日、8.6億米ドル相当の資金の貸し出しを行いました。銀行間の調達レートは 21%上昇し、最も高いときには 8%に達しました。

外貨準備残高は、7日の週には、過去最高となる 5975億米ドルに到達しました。14日の週に通貨の買い支えの為に164億米ドル相当が取り崩されたものの、21日の週には 4億米ドル積み上げて、未だ 5815億米ドルと世界3位の残高を保持しております。

7月の生産者物価上昇率は、3年半ぶりのペースに加速しております。原油価格の高騰を受けて、6月末の 28.7%に対して 33.7%を記録しました。インフレの目安となる消費者物価上昇率も7月は減速しているものの 14.7%とハイペースであることから経済への影響も懸念されております。


インドルピーは、一旦は原油価格の下落により3ヶ月ぶりの高値圏に入ったものの、経済成長の減速への懸念と16年ぶりの高インフレにより海外投資家の国内株式への投資が躊躇されていることを受けて、17ヶ月ぶりの対ドル安水準になりました。月次騰落率でも -3.1%を記録しました。

経済成長率は6月までの四半期で 7.9%と前四半期の 8.8%から減速し、政府目標の 8%を割り込みましたが、当局は達成可能とみております。

インフレ率は、その指標となる卸売物価指数が前年同期比で、原油価格と食料品価格の高騰により 16日までの週で 12.4%と今年で3倍になりました。洪水による作物への被害や食料供給が中断した影響が続いたものと見られております。

7月までの12ヶ月間の輸出は163.4億米ドルと、伸び率は過去3ヶ月で最高の 31.2%を記録しました。他方、輸出も 271.4億米ドルと 48.1%増えていることから、貿易赤字が 108億米ドルと過去最高を記録しております。

平均の原油輸入コストは前年から60%価格が上昇したことから、2007年では 55億米ドルであったところ、今年にはいって 80億米ドルに上昇しております。

外貨準備残高は22日、6週間ぶりに増加し、 2973億米ドルとなりました。

海外投資家は株式指数が年初来より 28%下落していることから 72億米ドル売り越しております。8月の営業日ベースでも27日までの 17営業日のうち 6日間以外が売り越されております。



人民元は、対ユーロで2005年の固定レートを解除して以来の大幅上昇となる 5.7%の上昇したものの、対ドルでは月次ベースで2006年5月以来の対ドル安となりました。世界的な需要減少を受けて、輸出業者の保護を目的に政府が元高を抑制するとの観測が強まっております。人民元は1-6月期に、2007年の年間上昇率に相当する6.6%上昇し、輸出業者の利益を圧迫し、また、海外での売上を冷え込ませております。

貿易黒字を抑制し、米国の政策を回避する為に当局が元高を目指すとの観測が広がり週次ベースで5月以来の上昇をみせた一方、オリンピック後の成長減速を回避する為に当局が為替相場安定を図るとの見方から売りが優勢となり4週間ぶりの大幅下落を見せる展開も見られました。

中央銀行が景気を下支えする為に預金準備率を引き下げるとの観測から1年を超える長期のスワップレートが早いペースで低下しています。

輸出は今年前半で21.8%の増加と、前年同期の27.6%から減速しております。7月までの7ヶ月では、中国にとって2番目に大きい取引先である対米で 9.9 %の増加、ヨーロッパ地域へ 27.1%の増加、日本に対しては 15.9%の増加を見せております。
7月の貿易黒字は、輸出が予想外に急増し、4%増加し 253億米ドルを記録しました。前月同月比で 26.9%の増加と伸び率も6月の 17.6%から加速しました。

インフレは7月、食料品価格の上昇が一段落したことから消費者物価上昇率が 6.3%と10ヶ月ぶりの低水準に減速しました。
7月の小売り売上高は所得増加と物価上昇を背景に、少なくとも過去9年で最大の伸びとなる 23.3%を記録しました。2008年上半期の都市部の可処分所得は 14.4%の増加、インフレ調整後でも 6.3%上昇しております。
7月の生産者物価指数は、前年同月比 10%上昇と少なくとも過去9年で最大の伸びを見せました。エネルギーや商品価格の上昇をうけたものと見られております。
7月の鉱工業生産は14.7%と 2007年2月以来の低い伸び率を記録しました。輸出の減速の他に、オリンピックのための大気汚染対策として、工場の操業を停止させたことが影響しております。

1-7月期の都市部固定資産投資は前年同期比 27.3%増でした。5月の四川大地震や1-2月の大雪の被害後の復興活動が押し上げ要因となったと見られております。その一方で住宅価格の伸び率が過去14ヶ月ぶりの低い伸び率となっております。

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