近年の企業買収から見る金融とそもそもの基礎知識 (6: 企業って、なに?)

4/26/2009
(注) この記事は 2006年7月12日の記事の再録です。

このタイトルで書き始めて、もう半年以上が経ち、その間そのきっかけとなった
バベルの塔の住人たちは一人捕まり、また一人捕まり、でも、その代わりのプレイヤーが
出てきたり、ゲームのルールが変わろうとしたり、と、めまぐるしい動きを
見せていました。

このシリーズ、金融を常に中心において書いてきましたが、でも、金融は所詮
資本主義社会における資金供給役、すなわち脇役であり、本当の主役は
ほかでもない、一般の企業なのです。

このシリーズの最終回として、その主役に目を向けて、
ついでに、最近多い、自立したいと考えている人たちに
ちょっとしたエールを送りたいと思います。

話を始めるにあたって、まず、幼い頃の夢を思い出してください。
男の子だとスポーツ選手が大半な気がしますが、
女の子だとお店屋さん、という子が多かったと思います。

例えば、お花が好きだから「お花屋さん」、
ケーキが好きだから「ケーキ屋さん」などなど。

その商品が好きで、それに触れていたからそのお店をやる、
とても純粋でいい心持ちだと思います。


で、その好きは花、ケーキの材料を仕入れるための元手は?
お店の家賃は?と、始まる瞬間から、もう遠い昔の夢の世界は
醒めて、商売を意識しなくてはいけなくなるのです。

まぁ、この間の5月になるまでは、会社を始めるには
有限会社ならば 300万円、株式会社ならば 1000万円必要で、
まずそれが店舗を借り、什器を買いそろえ、売り物を仕入れ、
商品を売り、光熱費を払って、バイトさんの給料を払って、残りがお店のオーナーの
取り分になる、というのが一般的な会社のスタートでしょうし、
これなら、まだお花が好きだから売っている、という世界で
特に人にも迷惑をかけずにやっていけそうな気がします。

でも、これがもっと効率よく、より早く自分の取り分を増やしたい、という
欲に変わったとき、子供の頃の夢は単なるハリボテに変わってしまうのです。

自分の取り分を増やすには、例えば売り上げを倍に増やす。
そのためには材料費が二倍かかるからその資金が必要になる。
また、一つのお店では売り切れないからもう一つお店を増やしたい。
出店にだって費用はかかる。店を増やすと人も増やさないと回らない。
そのお金はどこから出るだろう。ポケットから出せればそれが一番
手っ取り早いけど、みんながみんな、そうは行かない。
そんなときのシナリオは多分こんな感じだろう。。。

1. 両親から借りる
2. 親戚のおじさんに出資してもらう。
3. 知り合いの投資家に一口乗ってもらう
4. 取引のある金融機関から借りる
5. サラ金から借りてくる

ま、1. も 4. も、5. も本質は変わらない。
借りたなら返すしか無い。あとは金利の多寡が問題だけど、
それは借りるときにどうしたいかによればいい。
仮に利益率が 100% を越えるなら 29.2% でかりたって確実に
返せるだろうから。でも、それは、借りた利率が 0.1% であっても
利益が上がらなければ返せないという意味では一緒。
借りる以上は確実に稼がないと後で自分が泣きを見る。
そのかわり、ちゃんと稼げれば、いわゆるレバレッジ効果が
きっちり働くから自分の元手に対する収益率は飛躍的に
あがることになる。それは低利になればなるほど、だ。
なんにせよ、債権者というのは、契約書の利率さえもらえば
何も言わない、ある意味いい人たちなのです。。。

さて、問題は 2. と 3.
一口乗る、とか言っているが、要はあなたの会社の権利と引き換えに
お金を出すということ。なので失敗したときの責任は一緒に取ってくれるし、
責任を取ってくれるということは、「返さなくともいいお金」という説明を
よくちまたの本が説明していると思います。

しかし、そんなに都合のいい話でしょうか。うまくいっていれば、まぁ
何も言わないかもしれません。
プロの投資家だと、「もっと効率を上げろ」といって投資効率をあげるべく
いろいろ言うかもしれません。
ということは、失敗し始めて目減りし始めたらどうなるでしょう。
誰も笑って自分のお金が減っていくことを見る人はいません。
それがプロならばなおのこと。あなたの経営方法に、ビジネスモデルに、
どんどん口を挟み、経営権を取り上げて、あなたの夢だったお店を取り上げて行く
可能性もあるのです。

とはいえ、うまくいけば、2. や 3. は将来株式市場に自分の株を上場させられれば
ホリエモンのように大金持ちになれる、という夢を与えてくれるので
みんなどうしてもそちらの方に足が向いてしまいます。
そして、つぶれていった会社がいくつあることか。。。


いずれにせよ、経緯はどうであれ、会社の経営権、要は株をみんなで共有することは
創設者の夢はともかく、その事業を通じて投資した資金を最大活用して収益を
あげたい、と言う意味でみんなの目標が一致している、と見ることができます。


あれ、この表現どこかで見たこと無いでしょうか。

そう、「ファンド」の目標であった

「同じような投資目的を持った人たちの資金を束ねて、
その投資目的にそった形で運用する」仕組みが、今時呼ばれている
「ファンド」の広い意味なのです。

と、そっくりです。ファンドは、集めた資金を投資することで増やしました。
でも、企業は集めた資金を投資に限らず事業によって増やします。
要は、ファンドというものは、企業のうち、「(証券などへの)投資行為」で
資金を増やすことに特化した企業、という位置づけをすることが可能なのです。


そうなってくると、ファンドがその目標の成功の度合いを測る一つの目安である
「AUM(Asset under Management: 預かり投資資産)」の極大化を測るのが目標で
あるのと同じで、企業がその経営の目標として、株主への貢献として掲げる株価の増加、
すなわち企業の時価総額の極大化、というのは、株主の企業への投資に報いるという意味では
ファンドのそれと同じものなのです。そう考えると、最近の株価至上主義的な
動きというのは、本来の資本主義の観点で見ればあながち間違ってはいない、
という結論づけも悪くないはずなのです。

しかも、複数の企業のシナジーを求めるための会社の買収、合併 (M&A) の
手法の一つとして、現金での買収だけでなく、株式交換という形が
多く取り上げられていますが、当然会社の時価総額が大きい方が有利なわけなので
財務的に会社は「大きいことはいいことだ」ということになるのです。

あとは、その実現のための手段です。
それが合法であり続ける限りは(人のねたみはあるかもしれませんが)
それこそ「ルールに則ったお金稼ぎ」だから問題はないはずなのです。
# ま、社会貢献と言う尺度では問題はあるかもしれませんが。。。
問題は、ルールに反した場合、なのです。ま、それは多くの人が多くを
語っているのでそちらに譲るとしましょう。




最後に。

会社が大きくなっていくこと、それは多くの人をいろいろな形で必然的に巻き込んでいきます。
そうなると、気づいたら子供の頃の夢から遠く離れたところに気づいたら立っていた
ということになっているかもしれません。

今回紹介したもの、どれも大きな話ではあるものの、最終的には自分の夢の実現のための
道具にすぎないはずですが、その一方で大きすぎることから道具があなたを振り回しかねない
可能性を常に秘めているのです。所詮お金の話、ではあれ、お金は人を狂わせるのに
十分なくらいのちからをもっているのです。

夢は忘れないで。自分を見失わないで。

それが、自分でもしビジネスを起こすのであれば一番大事なこと、だと信じたいです。

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