BRICs Watch - February 2008

4/26/2009
(注) この記事は 2008年3月24日の記事の再録です。

3月も後半になると、花冷えと言いますか、暑くなったり、寒くなったりと
寒暖の動きの激しい時期ですがいかがお過ごしでしょうか。

さて、動きが激しい、といいますと、投資の資金も出入りが激しいようでして、
もはや2ヶ月前の話になってしまいましたが、日本の国内投資家が保有する
BRICs への投資信託の1月末時点の残高が、2007年末に比べて1兆円程度減少した、という
ニュースが流れました。

たったの一ヶ月で1兆円がBRICsから「流出」した、ということです。
それでも、というとおかしいですが、残高としては 4兆円残っている訳ですが、
ん?20%近くが逃げ出した、ということですよね?

確かにこのところのサブプライムローン問題を端に発する市場の不確定性は
資金を安全なところに移したくなるムードにさせている一方で、以前までは
一番安全とされた米国債に不安があることからドル安が進んでいることから
さて、どこに資金は行くのでしょうか。。。

証券会社の方とお話をして新しい商品の話をさせていただいても
「流動性は今商品設計では一番のキーになっています」
というくらい、皆さんにとって切実なようでして、
売り込もうとしていた、投資期間10年超、当初売却禁止期間5年なんて商品は
誰も見向きもしません。。。orz

しかししかし、BRICs はどうやらリスク不安を孕みつつも、資金の受け入れ先として
魅力的と映っているようです。

2月の新興市場は、実需によって市場が方向付けられた一方で、投資環境として良好なファンダメンタルズからドル安による投資資金の逃避先としての受け皿として機能した感もありました。

ブラジルレアルは2005年11月以来の 9日連続の対ドル高を記録して、この間 4.7%上昇しました。最終週には、1999年5月以来の1米ドル1.6630レアルを記録しました。国内株安の影響で投資資金の質への逃避が見られるものの、米国金利の引き下げ予想からインフレ率調整後でも相対的に魅力的な固定利付債などへの資金流出が引き続き起きています。

ブラジル中央銀行は、2007年の一年間でレアルの上昇を緩和し、外貨準備預金に計上するための為替取引などの結果、285億米ドルの損失を計上しましたが、一方で外貨準備残高も1905億米ドルを計上するまでに積み上がりました。また、1月に同国初の純債権国となったことから、格付け会社からの格付けも投資適格格付けに一歩近づいたと見られております。

経済成長による税収の増加(前年同月比で 26%)により、1月には過去10年で3番目の多い財政黒字を計上しました。2007年の商品輸出額も 1605億米ドルを記録し、年率で 20%の対ドル高を押し進める一因となりましたが、この対ドル高は国内の輸出業者の海外での価格競争力を失わせることにもなりました。

インフレ率の指標となるIGP-M は2月に 0.53% 上昇しましたが、2007年7月以来の低水準のままです。2/14までの IPCA-15指数も、0.64%上昇と前月の 0.70%上昇に比べて減速と、インフレーションが踊り場に入ったとの見方もあります。


ロシアルーブルは金・外貨準備高は月末に 4,839億米ドルを計上しましたが、中央銀行はこの外貨預金準備のうち、急激にその割合を変える意図のないものの現在 49%保有している米ドルのその保有割合を減らす予定である意図を示しました。

1月末時点の生産者物価指数は月次で 1.6%、年率で25.2%の上昇と、過去3年でもっとも速いペースになりましたが、ロシアの輸出全体の 67.7%を占めるエネルギー関連の価格上昇が牽引となったようです。他方、工業生産成長率は、昨年12月の 6.5% や、昨年1月の 8.4%と比べて年率 4.8%と減速傾向にありますが、昨年1月が暖冬の影響という特殊要因によるものであったことや、1月が9日まで休日であった事から12月と比べて減速するのは通常通り、との見方もあり今後の動向に注視したいところです。

GDP成長率は1月末時点で、年率 7.4%となり、また年初来2ヶ月間のインフレ率も 3%程度との試算がされております。インフレーションの抑制を意図し、中央銀行は2/4から基準金利である、レポ金利を6.25%と 0.25%引き上げました。

1月の財政黒字は 988億米ドルと、GDPの10.4%に達しました。また、12月単月での貿易黒字は、原油価格の上昇により137億米ドルと前月比 1.5%増加しました。2007年の通年で見ると、輸出が前年度比で 17%増加した一方輸入が 前年度比で44.9%増加したことから1528億米ドルと、2006年の 1634億米ドルから減少しました。

1月の純資本流出は 90億米ドル。昨年記録的な純流入であったことから、この資金流出によって過熱気味の景気を冷やすのではとの期待感もでてきております。

インドルピーは輸入業者による実需からのドル買いなどから、1ドル40ルピー台に戻し、月次騰落率でも、1.4%下落と2006年5月以来の下落幅を記録しました。原油価格の高騰により、国内エネルギーの75%を輸入に頼るインドにとってコスト増が影響しました。

2007年第4四半期終了時点での年換算ベースの経済成長率は 8.4%と、前四半期末の 8.9%からさらに減速感が鮮明になりました。特に、農業生産の成長率が同時期で 3.2%と、過去11四半期のなかでは最低水準と低迷しておりますが、これは土壌の水分不足と種まき時期に高温になったこと、小麦栽培の中心地であるウッター・プラデッシュでサトウキビの収穫の遅れから小麦の栽培が開始できなかったことなどが要因で、このため、政府は150億米ドル相当の4000万人もの農家向けローンの免除を検討しております。一方、工業生産成長率は同時期 9.3%と上昇しております。

12月の鉱工業生産指数は前年比7.6%上昇しました。工場や道路、発電所への投資が過去最大となり、セメントや鉄鋼の需要を押し上げた形となった事からです。インド財務省のレポートによれば、鉄道や道路交通網などのインフラ整備への投資が向こう5年間にかけて、現在9060億米ドルの GDPの5%から 9%、総額として 5000億米ドル相当額、に引き上げられる見込みです。

一方、インフレーションは食料品や野菜の価格の上昇、さらに14日に1年半以上ぶりに政府が個人向けのガソリンやディーゼル用燃料の価格を4.5%上昇させたことにより過去8ヶ月で最も高い水準となりました。インフレ率の指標となる卸売物価上昇率も、一旦は4.07%まで低下しましたが 4.89%に上昇しました。


財政年度開始である2007年4月から2008年1月までの10ヶ月での財政赤字は年間目標の 63.5%に抑えられていますが、海外資本の流入によるマネーサプライの増加がインフレーションの一因となることから、その流入を吸収するための金利の2度にわたる引き上げや市場安定化債券の売却の上限引き上げを4度、この財政年度に行ったが、海外ファンドによる記録的な株式取得の結果、そのための費用として年度始めに予定していた 370億ルピーの倍以上にあたる 820億ルピーを費やすこととなりました。また、2009年5月までに実施される総選挙を控えて、3月以降に個人所得税の減免措置などの減税を行う事を発表し、景気のてこ入れに乗り出しております。


中国人民元は「国内と世界の不確実性」の影響を受けて13日と26日にそれぞれ大幅に下落したものの、22日の週には2008年で最高となる週次ベースの上昇を記録し、結果として月次ベースで1%と引き続き上昇しました。2月に発表された当局による四半期報告の中で、インフレ率の抑制のために人民元の柔軟性を高め、政策金利を活用する方針を示されました。

株式市場も一度は2年半ぶりの上昇をみせるものの、引き続き6ヶ月ぶりの安値圏にとどまりました。流通株の新株発行のよる増加で既存株の価値が薄まるとの見方と、中国人民銀行による市中銀行の預金準備率の引き上げの継続方針が示された事が背景にあります。

1月のインフレ率は大雪による輸送コストや食品供給不足から 7.1%と過去11年で最も高い水準にあります。これを受けて当局のインフレ率の目標が4.6%から4.8%に上方修正しました。他方、2008年第一四半期の経済成長率は、海外での販売低調に加えて50年ぶりで最悪の大雪による個人消費や投資への影響から前年同期比で 10.5%に鈍化する見通しです。1月の生産者物価指数もエネルギーコストの急増を受けて、前年同月比6.1%上昇と、過去3年あまりで最大の伸び率となりました。

貿易黒字は1月に前年同月比で 22.6%増加し194.9億米ドルでしたが、月次成長率では3ヶ月連続の減少傾向にあります。1月の輸入額は前年同月比で42% の増加の 456.5億米ドルに対して輸出は前年同月比33.2%増加の 519億米ドルと、年成長率でそれぞれを比較すると 8.8%ほど輸出が輸出を上回っています。
輸出の減速の大きな原因としては海外での需要の減退があげられますが、その背景には米国のサブプライム危機や、人民元高による輸出品の価格上昇があります。その一方で、昨年の対米輸出額で中国はカナダを抜いて首位となりました。中国の対米輸出は過去6年で3倍以上になりました。

中国への海外からの投資額は1月に前年同月比で2倍以上となる 112億米ドルを記録しましたが、2007年全体で748億米ドルであったことから、貿易黒字同様国内の流通資金の増加の大きな要因となり、結果としてインフレーションへの影響も大きくなりつつあります。実際、マネーサプライの増加率も過去20ヶ月で最高となる18.9%上昇し、当局には更なる流動性のコントロールが求められています。

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