ライブドアショックに関しては

4/25/2009
(注) この記事は2006年1月21日の記事の再録です。

多くの人が多くの事を話し、書いていると思うので私がどうこう、
という物ではないとは思うものの、上司様から、
「やっぱりこれは書いておくべき事だよ。」

とおっしゃるので、金融のストラクチャリングを生業としている
私(と上司様)とがみた、今回訴状にあがっているスキームに
ついてあれこれと考えた事をちょっと書いてみようかと思います。

今回、ライブドア(我が社内でもLDと読んでるので、これからLD と略します。)の
今回パクられたとされるM&A 案件の会計処理ですが、まぁよく考えた、エンロン以来の
Creative Accounting なのかなぁ、といいつつ、でもこれは実質論から考えれば
それはやっぱりヤバいだろう、というところと、他の普通にまじめにやっている
人たちに影響が出ないかどうか、という点で心配になるところがありました。

さて、ではスキームを説明して行きましょう。
LD が投資する匿名組合(面倒なのでTK1と呼びましょうか)が、その投資の一環でさらにもう一つの
匿名組合(TK2 としましょう)に匿名組合出資をしている、というのがスタートポイントです。

ちなみに、匿名組合、というのは、ある人にその人名義で自分の代わりに仕事をしてもらって
その仕事の収益の分け前をもらう契約形態を云います。これによって、例えば、A/B/C さんが
とある事業をしているD さんと匿名組合契約を結んで出資して、DさんはDさん名義で仕事をして
その収益を自分含めた出資者 A/B/C/D さんと分け合う、ということになり、仕事の内容に
よっては、後ろにAさんたちがいるのがばれると嫌だ、というケースではもってこいなものです。

で、当初、出版会社を買収するために、LD 本体で買収する予定だったところを、
ライブドアマーケティング(LD同様 LDMと略します。)で買収する、と話を変え、
さらに、この出版会社と最終的に買収話をまとめたのが TK2 への株式の譲渡、となっていますが、
TK2 への譲渡のタイミングではまだ公表されておらず、数ヶ月後のLDM の株式の 100分割の
直前に出版社の株式とLDMの株式の交換、というかたちでの買収が発表されています。

そうなると、株式交換は TK2 と LDM との間で行われた訳ですから、分割前の LDM の株式が
TK2 にあり、TK2 は株式分割後にマーケットで売却して売却益を得、それをTK1との
匿名組合契約に基づき収益として分配し、TK1も LD との契約に基づき収益配当を行い、
LDは収益を計上出来た、というわけです。

さて、TK2 がもし LDM 同様 LD の連結子会社であるとします。
その場合、TK2 によるLDMの株式売却というのは、形を変えた LDM の株式の第三者割り当てと
変わりがない(最初の匿名組合出資がLDM の株に形を変えた訳ですから、グループ全体で
みると変わらないのです)ため、売却して得た代り金というのは民法などのルールに従って、
一部が資本金に、残りは準備金などのその他の資本に相当するものとして計上される
べきものとなります。

ということで、収益は配当しないで準備金に回ることで、LD グループ全体では、
結果としてLDM の株式を投資家に売る事で資本を厚くした、ということに違いはないものの、
後者のような実質論では収益計上出来ないものを、彼らのとったスキームでは一度収益計上して
いる、というところに、会計操作の疑惑が起きるのです。

で、このキーポイントは、私たちの世界でよく云うところの、「remoteness」の
問題、なのです。今回の場合、 TK 2 という直接関与のない匿名組合が LD の一部として
見なすべきかどうか、で、上記のような実質論を論じられるかどうかの前提が変わるのです。
もし、これが間接的にもLDと何の関係もない(結果として間接的にも匿名組合配当を
支払う必要のない)企業であれば、単にいいタイミングで買った、というだけの話に
なる訳ですが、匿名組合を一つ挿んで間接的な関与の状態にして、案件を進める事が
このremoteness 、言い換えれば TK2 が LD の支配下にある、とされた場合、類似の形態を
とりながら、投資家/担保提供者と関連性を低くする事で連結決算の回避や
倒産隔離 (bankruptcy remoteness)を行うことが否認される可能性が出てくる、となるのです。
それって実は結構重い話な気がするのですが。。。どうでしょう?

ちなみに、私は、LD や楽天、古くはソフトバンクのように、キャッシュフローを大きくする
ということ、株式資本を大きくする事で、昔からあるような会社に10年と言った短い時間で
肩を並べるというスピード経営には賛成だし、旧態依然として株主への還元もせずに
リスクをとらずにサラリーマンの論理だけで会社に(ハイヤーや経費での接待と言った)
まとわりつくような、今LDバッシングしているようなおじさま方には嫌悪感を示すのですが、
とはいえ、会計操作というような嘘があるのはまずいでしょうし、今回も論点はその
虚偽の報告をしたかどうかが問題であって、経営手法がとやかく言われるところではない、
と信じています。その点を間違いがちな人が多いので、それは、マスコミをはじめとした
物事にバイアスをかけて姿形を変えてみせて(視聴率など)いろいろな形で楽しもうとする
人たちの責任ではないかと思います。偽装問題も似たようなもので、本来は売り主と
買い主の問題でしかないところを売り主の雇った業者が悪いかのような論調は違うと思うのですが、
どうしても、そうやって人の知的興味をくすぐる形であおりがち、なのでしょう。

私もだまされないようにしなきゃ。

この記事を評価する

0 件のコメント:

Copyrights Emichanproduction, 1996 - 2011. Powered by Blogger.