「信託」という奥の手、って本当?

4/25/2009
(注) この記事は2005年11月29日の記事の再録です。

今、日経のサイトの「信託」という奥の手という記事を眺めたのですが、
要約すれば、ある資産を信託勘定に入れるとその勘定のなかの資産の金銭的利益は
享受できるものの、本来直接資産を保有することで得られる非金銭的利益(この場合ですと
株式に付帯する議決権の行使)が直接的には享受できない、ということを使ってTBSに
対する楽天の経営支配を遮蔽する、ということ、なのですが、本当にそうですかねぇ、というのが
私の意見。

まぁ、設定する信託勘定の信託契約がすべてを握るのですが、
基本的には、信託勘定の指図権をどう設定するか、また、その指図権に
基づく行使に対する拒否権をどうするか、で大きく変わると思われます。

言い換えると、確かに株式保有者の名義は信託銀行に移転するものの
その保有名義は信託勘定としての保有であり、その信託勘定の指図権を
楽天が保有し続けるのであれば、信託勘定の資産運用の一部としての
指図の内容で議決権の行使をすることはテクニカルには可能です。
あとは、その指図に「合理的に従わなくとも受託者が免責される」と
なっていた場合に、議決権の行使の拒否が合理的理由にあたるかどうか
という判断を司法に求める、というウザったい話に話が摩り替わるものの、
信託勘定の収益の最大化のための議決権行使を拒否することが受託者
義務を負う信託銀行にとって合理的判断かどうかは、もちろん明確ではない
し、時の司法がどう判断するか(受託者に社会的混乱を未然に防ぐ義務を負う
べき、とするならばそうなるでしょうし。。。)によるものの、
それは、確かに書かれているような「TBSにとっての時間稼ぎ」に過ぎず、
また、そのようなリスクを取れる信託銀行があるかどうか、ということにも
つながるように思えるのです。

要は、なぜ企業連合が「トラスト」と中学校の教科書で書かれ、また
その結果独占禁止法が「反トラスト法」と呼ばれるか思い出すとわかると
思うのですが、企業を支配するのに、直接的に株や債権の取得を行うほかに
(世に言うハゲタカファンドもそうですが)信託勘定を通じての株や債権の取得も
現実的には可能な話です。実際、債権をひとつの信託勘定にまとめて
最大の債権者となるようにまとめて管理し、そのまとめるアレンジをしたファンドが
その企業に対して間接的に関与していくということは既に実際に行われているのですから、
その対象がTBSであっても同じでなければならないのが、社会の公平性だと思うのですよ。。。

むしろ、株の保有者としての受託者が議決権を行使していなかったこと自体が
不自然で受託者としての義務を果たしていないとすらいえるようにも思えるのです。

さて、どの信託銀行が受託者になるのですかねぇ。
これって小口無担保消費者ローンの受託よりも裁判に巻き込まれるリスクが高いように
思うのですが(笑)、これを受けられなかった邦銀信託さんに行くのですよねぇ、きっと。。

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