事業リスクか個別リスクの集合体か

ちょっと古い話、といっても昨年の夏頃に大流行りした話、について
実はずっと頭の中であれこれ考える機会があったのですが、文章にしたいと
思いつつ放置していたので、

今年はちゃんとブログを書くぞっ!

という隠れ決心に基づいて、書いてみることにしました。

いきさつとしては、まぁ、こんな感じです。




とある知人のご紹介で、とある方をご紹介頂きましたのが昨年の夏頃の事です。
その方、Aさんとしましょうか、は、彼の知人の X 社さんに頼まれてとあるプロジェクトの投資家を探す事を求められていたようでした。そのプロジェクトとは。。。

Y県で予定しているメガソーラー

でした。そう、夏頃といえば、再生可能エネルギーによる発電に対して、その買い取り価格を高めに設定して、民間による再生可能エネルギーによる発電事業への参入を促すという政策が発表されて施行されたタイミングでしたね(覚えてますか?)

そこに参入しようとする X 社さんと、諸般の事情を抱えていることから事業誘致を目論んでいた Y 県とで水面下に合意しつつ、表向きは入札という形をとる、というこの案件で、25年間という超長期のプロジェクトに対する資金調達をファンド形態で行う事が出来ないか、と X 社が、ファンド業界に携わるA氏に依頼されて、A氏がどういう訳か私のところに相談に来られた、というところです。

ご存知の通り、大手金融機関から新興企業、不動産関係から、特に高い買い取り価格が提示された太陽光発電に対してはファンドを組成して事業を開始する、という新聞報道が踊っていた当時、X社も同様のアプローチが可能か、ということを検討していたようですが、他方で、プロジェクトに関与するとあるパートナー企業が最終的には投資資金をすべて供出する事でこの案件は決着して、ファンドがどうの、ということも無くなってしまいました。

しかし、ファンドと証券化のようなストラクチャーものが生業の私にとっては、知的なトレーニングに最適なお題でもあり、少し考えてみました。


一般的なファンド形態で投資資金を募ってこのメガソーラー事業を 25年運営していく、ということはどういう意味なのか、と。

もし、端的にこの事業だけを行う会社がすべてを保有して収益を上げる、ということならば、その会社の株式を保有する、もしくは融資する、で投資は完了、ではあります。まさに事業投資を会社投資の形にしている典型といえます。しかし、この事業を一つの会社が行う、とした場合に、一体何がどう必要になるのか、と考えた場合に、この事業投資とそのリスクを読み解いていくことが出来ます。

このメガソーラー事業、何が必要かというと、

土地(当然ですな)
ソーラーパネルやそこで発生した電気をひとまとめにする設備といった「発電設備」
既存の送電線につないで電源を供給するための送電線や高圧送電塔といった「送電設備」
これら「設備」廻りを日々管理・保守し、この売電事業を行う「オペレーター機能」

が、ざっくり必要となります。とすると、これらをひとまとめにして事業を始めるまでに、まっさらな会社は

(1) 発電設備を設置する土地を取得し、もしくは貸与を受け、
(2) 送電塔を設置する為の土地を取得し、もしくは貸与を受け、
(3) 発電設備を購入して設置し、
(4) 送電塔と送電線を設置し、
(5) 実際の発電と送電を行って売電を行い、
(6) 設備の点検・保守を行い、必要に応じて修理・交換等を行う

というところでしょうか。そこで、ふと気付く事が出てきます。
たとえば、 投資家目線で考えた時に、(1) 期中の事業と収益の安定性は?(2) 25年の超長期で行うこの事業の25年後の資金回収する方法は?など、他にもちょっと書けない話はありますが、これらを考えていくと、事業リスクをリスクの度合いに応じて分解する方が実はいいのでは、と個人的に思い始めたのです。というもの、これが本来的にはインフラへの投資ファンドという性質で見ることが可能でもあることもあっても、本源的には

土地を保有することで発電事業体に土地を貸すことで売電事業の収益の一部を地代として安定した収益を受ける形を取る、不動産投資部分



設備を購入して発電事業体にリースすることで、売電事業の収益の一部をリース代として取得設備費用と収益を確保する、リース事業部分

そして

土地、設備の貸与を受けてそれぞれを設置し、人材を確保し、運営事業に専念することですべてのコスト控除後の収益を狙う、純粋な意味での売電事業部分

と分ける事で、それぞれのリスクの性質に見合った投資家を見つけやすくなるのではないか、と。なにせ、いくら流行だとはいえ、25年間一つの事業に投資し続ける事が可能な投資家など普通の投資商品として提案したとしたら見つけづらい(裏を返せば、企業グループの優先投資事業、のようなコミットメントがあればせざるを得なくなる)訳ですから、それなりに投資家のリスクを区切る事で、不動産投資家には不動産部分を、リースの仕組みによって発生するだろう税制上のメリットが欲しい企業にはリース部分を、純然たる事業部分に投資したい場合には事業部分への投資、と誘導しやすくし、また途中であってもそのポジションを第三者に転売可能にしやすくしておく必要が出てくるのではないか、という読みがあるからなのです。

まぁ、こうすることで、実は予想されるキャッシュフローが本当に収益性のある事業なのかどうか判断しやすくなる、のではないか、とも思ったのですが、聞くと、案外「現在の候補地の地主は、売りたいと考えている」という話が出てきたり(まぁ、今まで誰も見向きもしなかった山野が誰かが必要とする、とあれば売ってしまいたいと思うのも当然かもしれません)、「あっちとこっちとで、ソーラーパネルの値段やその設置コストなどなどが違い過ぎる」という噂が聞こえたり(日本製と中国製でかなり開きがあって、しかもそんな中国の会社も実はこのバブルのおかげで却って危ない状態になっている、という先行するドイツと同じ状態になりかかっている)とか、まぁ、この話を聞いて考える時にちょうどいい切り口を持てたなぁ、というのが実際です(笑)とどめが、買い取り価格があっという間に下がるという話が聞こえてきているので、売上がどれだけ持続可能かという疑問すら湧いてきちゃいます(苦笑)



ということで、今も現在進行形な話がかなりあるこの話、下手にあれこれ書き過ぎると起こられそうな気もするのでこれくらいにしておきましょうか。。。

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