Local structure? offshore structure? (もしくは、offshore の存在意義とは)
数ヶ月前のこと、Jersey 島から一人の弁護士が東京に来ました。彼は私のところで今取り組んでいる案件の担当弁護士なので、そのお客様にあう名目の「ついでに」東京のビジネスの可能性のありそうなところにいってそのニーズを探りたい、という理由で来ました。元々香港で数年オフショアの法律に基づくファンドの弁護士をしていた事もあり日本の事情も知っているものの、日本での会議をアレンジするには知り合いが言うほどいないと言うことで、私の方で弁護士から銀行、証券会社、ファンド関連など4日で26件ほどのアポをいれてあれこれ話を聞く機会を得ました。まぁ、シャイな私としてもなかなか手ぶらでお客さんのところに行くのも気まずい事もあり、こう言う機会に便乗している、というのもあるのですが(笑)震災から数ヶ月前、それ以上に2008年の信用不安からの金融危機を越えて、日本のファンドの世界はどう関係者がみているか、聞くにはいい機会でした。
そんな中で、面白いなぁ、と思うことと同時にここを変えないと日本は海外に開けていけない、と思うことがあったので書き残しておこうかと思います。
例えば、もし日本人のあなたが、アメリカの会社の株を買うとしたらどうするか、ちょっと考えてみてください。方法は端的に言えば3つ
個人の投資、という意味で考えても、多分取りえるアクションは上記の数字の順序の通りではないでしょうか。というのも、日本人として納税義務を負っているので、その義務を以下に余計な手間をかけずに行えるか、というのが必ずついて回ります。続いて、取引場所での課税問題というのが次の問題となり、その上で現地で株式を所有する事に関する問題を検討するのがある意味投資を考える上での手順だと考えられます(逆回りで考える事も当然あります。その国の法制度を押さえたスキームを考え、その次にそこに参加する為に海外からどうやって入るか、という話ですが、まぁ、それは案件ありきなので。。。)
とすると、既に証券口座や現地市場へのアクセスを作って諸般の問題の解決を既にしてくれている、いわば国内の証券取引の延長で出来るかどうか、とまず考えて、続いてもしそれが出来ないなら、税制にネガティブな影響がない、という意味でのメリットのある租税中立国と言うべき海外の第三国で取引をすることを考えます。ここならば、ある意味税制的に導管なのでここでの課税問題を考える必要がなくなるので国内と対象国だけを考えればいい訳です。
で、最後に対象国、というと、なんで?となるでしょうけど、考えてみてください。直接日本から投資できる国、どれだけあるでしょう。仮に出来ても税制は二国間の取り決めなので相手国によってまちまち。確かに、租税条約に基づくメリットがそんざいししかも非居住者口座に対する扱いも国により違う訳ですから、例としてアメリカを取り上げていますが(というと、後だしじゃんけんですね、ごめんなさい)。アメリカだけ考える訳に行かないこのご時世、複数国への投資を考えるにあたって、いちいち200近く地球上にある国との租税条約や現地の非居住者口座の取り扱いを頭に入れて、その個々の市場間に生じるオーバーヘッドを考えながら投資することは余計なコストがかかりすぎている、と言っても間違いではないでしょう。
実は、これが、オフショア金融センターがなぜ存在するか、また、オフショア金融センターが目の敵にされる誤解の理由でもあるのです。
物流の世界で「ハブ・アンド・スポーク」型の中継地の構造がある意味効率化という観点での主流になっているのと同じで、投資の世界でもこの「ハブ・アンド・スポーク」型の資金の流れが出来上がりつつあって、その意味でのハブがオフショア金融センターの担う役割になっています。リーマンショック後は更に税務情報の交換ということをオンショア諸国と進めることでtax neutrality(tax haven ではなく)を従来の導管性を更に推し進める道具にしてその地位向上を求めています。
が、その一方で、一つ大事な誤解がオンショア諸国(の、特に税務担当者)に引っかかっている事実があるのです。それは、オフショアに流れたお金は永遠にオフショアの迷宮に留まって出てこない、というものです。迷宮入りして使途不明になる上にオンショアに戻ることなくオフショアで享受される厄介な場所だ、と。
考えてみましょう。オフショア、例えばジャージー島やケイマン諸島。小さい島です。そこに投資する対象があるでしょうか。いや、オフショア金融センターとして古くからある島で巨額のお金が留まっていたら、のどかな観光都市としての島が維持出来ないでしょう。でも、小さな島といえど、その環境を維持しながら島の経済や統治を維持するためには収入が必要です。
例えば、香港、シンガポール。今でこそ、不動産に魅力が、という投機資金の流れが出来上がりつつありますが、なぜそこに人が集まって来るのでしょう。フリーポートとしての物の流れを支えるための「仕事」があるように、オフショア金融センターを「通過する」資金の流れを支えるための「仕事」があるから集まって来るのでしょう。
考えてみましょう。オンショア、例えばベトナムやタイ。国の発展のための投資資金を国内で賄えるでしょうか。
例えば日本。国内の金利レベルと熟成し切って成長を見込むものを見つける対象を見つけるためのコストがかかり過ぎるこの国の外に投資対象を求めるのは当然です。
とすると、オンショアというスポークの先を繋げるハブはオフショアに期待されるし、実際に資金はオフショアに入ったところで最終的にはオンショアに戻るのです。
とすると、バラバラにオンショアからオンショアに個別に流れるより、道筋のついたオフショアからオンショアに資金が流れ込むほうが取引の件数の増加に伴う業界全体としての経験の積み上げ、引いては投資プラットフォームの一元化ということでも国を問わず海外の投資家の主流に対応しやすいという意味でも理に構う話なのです。
さて、かなり遠回りしましたが、やっと言いたいこと。
特にPE 業界の、投資家(LP と良く呼ばれますが)サイドと運用者
(GP なんて呼ばれますが)の間で、業界標準の投資条件を定める契約書が作られていて、また海外投資家と国内投資家との間の課税効果を均一にするための税法改正に対応できるように税務当局と業界とで確認をした雛形が存在するそうです。いわば、これに名前を書いてサインすれば契約成立というわけです。一見良さそうですよね。業界の標準が存在するからそれに従えばいい。
でも、ちよっと待ってください。
海外の投資家さんが日本法に自身が縛られるリスクという不慣れなリスクや、個別対応が必須のクロスボーダーのリスクや事務コストを、投資のリスクに付け加えて取りたいと思うでしょうか。無論、期待リターンとの兼ね合いでしょうけれども、一般に考えると、日本の投資家ですらケイマン籍のファンドをハブに使う今、逆を海外に期待出来るのでしょうか。
ということで、そういう危うさ、過信が隠れてるなぁ、と思ったのでした。って、これ書くのに時間をかけ過ぎたなぁ。。。。
-- iPadからの書き込みでした
そんな中で、面白いなぁ、と思うことと同時にここを変えないと日本は海外に開けていけない、と思うことがあったので書き残しておこうかと思います。
例えば、もし日本人のあなたが、アメリカの会社の株を買うとしたらどうするか、ちょっと考えてみてください。方法は端的に言えば3つ
- 日本国内の証券会社に口座を開いて買う
- ケイマン諸島のようなオフショアに口座を開いて買う
- アメリカの証券会社に口座を開いて買う
個人の投資、という意味で考えても、多分取りえるアクションは上記の数字の順序の通りではないでしょうか。というのも、日本人として納税義務を負っているので、その義務を以下に余計な手間をかけずに行えるか、というのが必ずついて回ります。続いて、取引場所での課税問題というのが次の問題となり、その上で現地で株式を所有する事に関する問題を検討するのがある意味投資を考える上での手順だと考えられます(逆回りで考える事も当然あります。その国の法制度を押さえたスキームを考え、その次にそこに参加する為に海外からどうやって入るか、という話ですが、まぁ、それは案件ありきなので。。。)
とすると、既に証券口座や現地市場へのアクセスを作って諸般の問題の解決を既にしてくれている、いわば国内の証券取引の延長で出来るかどうか、とまず考えて、続いてもしそれが出来ないなら、税制にネガティブな影響がない、という意味でのメリットのある租税中立国と言うべき海外の第三国で取引をすることを考えます。ここならば、ある意味税制的に導管なのでここでの課税問題を考える必要がなくなるので国内と対象国だけを考えればいい訳です。
で、最後に対象国、というと、なんで?となるでしょうけど、考えてみてください。直接日本から投資できる国、どれだけあるでしょう。仮に出来ても税制は二国間の取り決めなので相手国によってまちまち。確かに、租税条約に基づくメリットがそんざいししかも非居住者口座に対する扱いも国により違う訳ですから、例としてアメリカを取り上げていますが(というと、後だしじゃんけんですね、ごめんなさい)。アメリカだけ考える訳に行かないこのご時世、複数国への投資を考えるにあたって、いちいち200近く地球上にある国との租税条約や現地の非居住者口座の取り扱いを頭に入れて、その個々の市場間に生じるオーバーヘッドを考えながら投資することは余計なコストがかかりすぎている、と言っても間違いではないでしょう。
実は、これが、オフショア金融センターがなぜ存在するか、また、オフショア金融センターが目の敵にされる誤解の理由でもあるのです。
物流の世界で「ハブ・アンド・スポーク」型の中継地の構造がある意味効率化という観点での主流になっているのと同じで、投資の世界でもこの「ハブ・アンド・スポーク」型の資金の流れが出来上がりつつあって、その意味でのハブがオフショア金融センターの担う役割になっています。リーマンショック後は更に税務情報の交換ということをオンショア諸国と進めることでtax neutrality(tax haven ではなく)を従来の導管性を更に推し進める道具にしてその地位向上を求めています。
が、その一方で、一つ大事な誤解がオンショア諸国(の、特に税務担当者)に引っかかっている事実があるのです。それは、オフショアに流れたお金は永遠にオフショアの迷宮に留まって出てこない、というものです。迷宮入りして使途不明になる上にオンショアに戻ることなくオフショアで享受される厄介な場所だ、と。
考えてみましょう。オフショア、例えばジャージー島やケイマン諸島。小さい島です。そこに投資する対象があるでしょうか。いや、オフショア金融センターとして古くからある島で巨額のお金が留まっていたら、のどかな観光都市としての島が維持出来ないでしょう。でも、小さな島といえど、その環境を維持しながら島の経済や統治を維持するためには収入が必要です。
例えば、香港、シンガポール。今でこそ、不動産に魅力が、という投機資金の流れが出来上がりつつありますが、なぜそこに人が集まって来るのでしょう。フリーポートとしての物の流れを支えるための「仕事」があるように、オフショア金融センターを「通過する」資金の流れを支えるための「仕事」があるから集まって来るのでしょう。
考えてみましょう。オンショア、例えばベトナムやタイ。国の発展のための投資資金を国内で賄えるでしょうか。
例えば日本。国内の金利レベルと熟成し切って成長を見込むものを見つける対象を見つけるためのコストがかかり過ぎるこの国の外に投資対象を求めるのは当然です。
とすると、オンショアというスポークの先を繋げるハブはオフショアに期待されるし、実際に資金はオフショアに入ったところで最終的にはオンショアに戻るのです。
とすると、バラバラにオンショアからオンショアに個別に流れるより、道筋のついたオフショアからオンショアに資金が流れ込むほうが取引の件数の増加に伴う業界全体としての経験の積み上げ、引いては投資プラットフォームの一元化ということでも国を問わず海外の投資家の主流に対応しやすいという意味でも理に構う話なのです。
さて、かなり遠回りしましたが、やっと言いたいこと。
特にPE 業界の、投資家(LP と良く呼ばれますが)サイドと運用者
(GP なんて呼ばれますが)の間で、業界標準の投資条件を定める契約書が作られていて、また海外投資家と国内投資家との間の課税効果を均一にするための税法改正に対応できるように税務当局と業界とで確認をした雛形が存在するそうです。いわば、これに名前を書いてサインすれば契約成立というわけです。一見良さそうですよね。業界の標準が存在するからそれに従えばいい。
でも、ちよっと待ってください。
海外の投資家さんが日本法に自身が縛られるリスクという不慣れなリスクや、個別対応が必須のクロスボーダーのリスクや事務コストを、投資のリスクに付け加えて取りたいと思うでしょうか。無論、期待リターンとの兼ね合いでしょうけれども、一般に考えると、日本の投資家ですらケイマン籍のファンドをハブに使う今、逆を海外に期待出来るのでしょうか。
ということで、そういう危うさ、過信が隠れてるなぁ、と思ったのでした。って、これ書くのに時間をかけ過ぎたなぁ。。。。
-- iPadからの書き込みでした
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