サービスの価格と考え方

この週末、興味深い事が起きたのでちょっとご紹介を。

とある先様に呼ばれてご面談させて頂きました。
その会社様は、私の会社とはまだお仕事をご一緒させて頂いていないのですが、とあるお客様に商品提供をしたいが為に、実績のある私の会社にお声がけをしてくださったのです。
とてもうれしいお話なのですが、そのお客様からの私の会社に対する要望というのをあわせて伺う事にもなったのです。それは

「商品立ち上げの際の費用が高すぎる」

そのご面談の際には、検討します、ということで終わりとましたが、もしやと思い、そのお客様に提案中の、お取引先にその後の提案の進捗状況を伺いました。すると、現在も検討中で悪くはないものの、やはり私の会社の商品立ち上げの際の費用についてご要望が出ている、ということを聞くことになったのです。こちらの方とはおつきあいも長くさせて頂いているので、ご要望の出た際のお客様のニュアンスなどについてもう少し詳しく伺う事が出来たのですが、

「他社さんは、立ち上げの際のコストを商品が走っている期間の報酬でまかなっているのだから、立ち上げ時の費用負担の見え方を減らす為に他者に習ってそうすべきだ」

というのがどうも背景にあるようなのです。


さて、ここでいう他者さんは、ファンドの資産運用を中心とするサービスを提供する、いわゆるアセットマネジャーさんを指すのですが、対する私の会社は、というと、資産運用の基軸になる売ったり買ったり、というサービスは提供せずに、ファンドの資産が適切にファンドの目論見書に書かれている運用の方法に合致しているか、ファンドが動いている間に必要となる国内外の届けで等を適切に行う、などのコーポレートガバナンスを中心とするサービスを提供する、ファンドマネジメント会社、なので別物、なのですが、出来上がりの商品が他者さんと同じ、「外国籍投資信託」になる以上、同じ比較をされる定めにある、というのは理解します。

さて、問題は、といえば、サービスの価格とはどうやって決定すればいいのか、という点にあります。私の会社で提供しているのは、コーポレートガバナンスを提供する以上、目論見書の記述の正確性などの、商品設定のときの作業もサービスの一環である以上提示すべきと考えていますし、ファンドが動いている間の管理に対する報酬も同様ですので、いわば、ファンドのコーポレートガバナンスに掛かる報酬のアンバンドリングをしていると考えて価格の設定と提示をしています。これは、今では鼻つまみものになってしまった、証券化商品がはやったときにいわれた、直接貸し出しの金利が借り手の費用負担であったところ、証券化商品にしたことで、それぞれの担保管理費用や、調達コスト等に分解できることで価格の透明性が提示された、のと同じ考え方にあります。
# というのも、私の会社の成り立ちが、このようなストラクチャー商品の管理から
# 始まっている事に起因するからですが。。。

それに対して、アセットマネジメント会社さんは、売ったり買ったりするのが一番の商品であって、コーポレートガバナンス等は付随的なものであり、従ってどうしてもそのあたりは全体のコスト感覚の中で埋もれてしまっているから、逆に価格の提示の際に柔軟性があるのかもしれません。ある意味羨ましいところですが、コーポレートガバナンスがコミットメントなく、十把一絡げにおざなりにされるリスクを抱えていることにつながります。まぁ、私の会社より先んじて商品提供されている会社さんはどこも大きな会社さんばかりですから、そんな事はないでしょうけれども、実際に管理コストとしてはどうなんでしょうね。回るのでしょうか。


逆に、我々が将来受け取る報酬で設定時の費用をまかなう費用構造にした場合、受任資産のばらつきによって、運が良ければそれ以上の回収が出来得ますが、運が悪ければ出来ないこととなり会社の経営の観点からいえばリスクを抱えることになります。いわば、それくらい商品の受任期間の報酬は受任期間の作業の対価のぎりぎりの所まで削ってある証拠でもあります。とはいえ、

「そんな事はビジネスでやるのだからリスクを取るべきところでは」

といわれる方もいらっしゃるかと思いますが、既に数千億円相当の資産を預かる投資信託の管理を行う会社である以上、会社を一つの案件の為にリスクにさらして、結果倒産したことで他のお客様の資産に迷惑をかけることになるのは他のお客様の望むところではないはずです。

といったところで、そこまで見越して費用構造にご意見を頂戴することはなく、費用は悪、だからサービスプロバイダーは企業努力で下げるべきだ、それで下げさせた商品を提供している我々は投資家の利するところだ、という集団心理にかられていらっしゃるのでしょうねぇ。

適正な価格とはいったいなんなのか、それは誰にとっても正しいものは存在しませんが、歪ませた結果大きな社会的損失を被るような事にならなければいいのですが。それは、私の会社の商品の話、ではなく、世の中の、安ければ幸せだ、というデフレという言葉に釣られる集団心理のほうに恐怖を覚えるのですが。。。。。

2 件のコメント:

落合 さんのコメント...

質問。コーポレートガバナンスって言うのは甘いと、どんなリスクがあるのかってのと、他社はそのリスクをお客に負担させているの?

しかし、お客にリスクを知らせず、もしくは意図的に意識させずに、安さで勝負するのは、商売としては3流だと思うんだけど。幸か不幸か、ファッション雑貨は安売りだけではやっていけないので、対策がいくつかありますが。

スーパー系の建物にも出店しているので、感じるのは、安売り合戦に自ら混乱、麻痺しているんじゃないかと。
何が集客に効果があって、何がそうじゃないって言うのを検証してる暇(能力が無いと言うのもあるが)が無いのか、毎日の様に チマチマ した販促活動の連続で、付き合わされるこちらとしては、面倒なだけ。。。
1,000円の商品の10パーセント割引が1人だけの販促って、(一日平均100人くらいの購買客の店でね。)ある意味、知らないお客様に対して失礼なので、こんな物なら、やらない方がマシ。

おっと、グチが長くなりスマソ。

Shinobu さんのコメント...

ナイス突っ込み。まるで内通者みたいなコメント感謝です。

コーポレートガバナンスが甘いと何が起きるか。

ファンドの世界なら、売買対象外の資産の売買を許してしまう、とか、ファンドの資産を投資以外の別の目的に拠出してしまう事を許す、など、本来の目的に合致しない行動を許容し始めるリスクがまずあげられます。あまり引き合いに出してはいけないだろうけど、ファンドの運用会社の懐事情が良くないから、という理由で、運用会社の運用に関係のない(交際費とか資産取得とか)支出をファンドの資産からしてしまうケースは散見されるんですよ。その一つの原因として、運用会社が資産の処分権を抱えてしまう事で、その最たる例が最初から詐欺目的にファンドに資金を集めて架空の取引に基づく継続開示を行いつつも私財に流用していた Madoff 事件があげられるかな。

大手の会社に限ってそんな事はない、というだろうけれども、コストセンターとして位置づけられやすいコンプライアンス機能とかはプロフィットセンターとしての運用機能に比べて陣容などが手薄にされがちで、事実運用のスタイルドリフトといって、気づいたら本来の運用方法で稼げなくなったから運用方針を徐々に拡大解釈して収益性を保とうとするケースがあるのだけれども、運用方針と実際の運用内容との齟齬をその社内での力関係上内部から厳しく管理できない結果からきているともいわれています。

そこで、第三者によるガバナンス機能が実は投資家保護の観点から欧米を中心に求められつつあるのがこの一二年の流れといってもいいかもしれないし、それを提供しているのが私のところ、と言えるかな。

同業他社でも近いサービスを提供しているところはあるけれども、日本の顧客の為に国内拠点を置いているところは実はなくって、ないことを金融業法上グレーな中で対応しているのが他社で起きていることでもあるのだけどね。

金融商品はリスク開示をきっちり行う事が求められているから、それは行うのだけれども、日本の場合、サービスなんてものはやって当然、ってことでクオリティに疑いを持たない文化が存在するけど、海外においてはそのクオリティの差、が支払う対価で明確に見えるというところで落とし穴があるように思うんですよねぇ。。。その意味では、本当にその会社が入っていいの?という本質的なリスクは評価できないことから開示されていないかもしれない。というか、本質的であるがために開示できないのが本音かもしれない。。。

さて、お客だから提供を受けて当然、という日本特有の市場、といえばそれまでかもしれませんが、それが今後の市場の成熟の方向性という意味で正しいのかどうかはまた別ですから。。。


ということで、うん過当か値引き競争っていうのは頭のいたいのは業種に関わらず、ですなぁ。。。

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