BRICs Watch - October 2008

4/28/2009
(注) この記事は 2008年11月24日の記事の再録です。

ということで、今月もBRICs の時間がやって参りました。

昨年の中頃から、サブプライム関連が、と言っていた金融の世界ですが、10月がある意味
大きく市場が揺れたような、そんな感があります。対ドルでドルが安くなり(円が強くなったわけでなく)
リスクからの回避行動が一気に起きた為に更なるドル安が進んだはず、だったのですが
先進国はいざ知らず(おかげさまで先月の出張では私にだけ見える30%オフのレッドタグが町中に張られてたわけですが)
新興国は、というと、先進国以上に、自国のファンダメンタルズなぞ忘れ去られるような市場の動きが起こり、
その結果、自国の通貨防衛を余儀なくされて、中央銀行破綻なんて話すら飛び出したわけです。

大きなより戻しが一気に来た、と見れば良いのかもしれませんが
それにしても、そのより戻しのあとも政策が市場を一喜一憂させるため
市場が市場として機能しなくなっていた、というのも事実のようです。


さて、誰もが世界が今後どちらに向かって行くのか、不安は隠せないところですが
人間が出来る事、それは過去から学び、将来に向かって想像力を高めて準備することに
他ならないのかもしれません。あと、準備したことを実際に行う勇気が。。。

あーあ、もっとドルとかポンドとか仕込んでおけば良かった(苦笑)
ということで、今月の BRICs 行きましょうか。


10月は、各国のファンダメンタルズよりも、投資家のリスク回避行動がすべてを優先し、また自国通貨を守るべく政策の限りを
だし続ける各国の動向に市場の流れがすべてゆだねられたと言っても過言ではないほど、すべてが右往左往する月でした。

ブラジルレアルは、9日に2002年以来となる 7%以上の上昇を一日で記録し、また月の最終週にも 9年ぶりとなる+9.75%の週次リターンを記録した一方、第一週目に週次で 9.8%と2002年9月以来の大幅下落を記録し、月の後半でも一日でも 5.4%下落するなど乱高下した結果、月次ベースで 11% 下落し、2002年以来となる月次ベースで3ヶ月連続の対ドル安を記録しました。世界的な経済の減速により新興国の商品や資産に対する需要が減少した事が主因と見られております。8月1日に記録した過去9年での最高値から一時は31%下落し、月末時点でも26%下落した計算になります。

ブラジルの輸出の2/3を占めるコモディティの価格も世界経済の減速による原材料に対する需要の減少に伴って 、19の原材料をカバーするロイター/ジェフェリーズCRB指数で少なくとも1956年以来最も悪い月次リターンとなる24%の下落を記録し、株式市場もこのひと月で 24%下落しました。中央銀行の試算によれば、月初からの21日で 33.9億米ドル相当が国外に流出したと考えられています。9月は通月で28億米ドルの流入でした。

中央銀行は過去4回連続して引き上げた政策金利を今月は据え置く事で経済成長の減速を食い止めようとしております。また、金融システムの安定の為に9月24日以来中央銀行への準備金の引き下げや過去最大に積み上がった外貨準備残高を取り崩してドルを売る事でレアルの大幅な値動きを押さえました。また、460億米ドルを金融システムに注入することで安定化をはかり、500億ドルを投じて通貨防衛に回る事を公表しました。

インフレの指標となる IPG-M 指数は、10月20日までのひと月で 0.95%の上昇でした。ドル建ての原材料価格が2.09%上昇し、また消費者物価も0.25%上昇と前月から反転したことから、前月同時期の 0.11%から再び加速傾向に転じております。月半ばまでの消費者物価指数であるIPCA-15 も月次ベースで0.30%の上昇と前月同時期の 0.26%から加速傾向にあります。10月半ばまでの12ヶ月での年次ベースでも 6.26%と前月同時期の 6.20%から上昇傾向にあります。しかし、9月末までの消費者物価指数である IPCA 指数は 0.26% と8月末までの 0.28%から4ヶ月連続で減速していました。

9月の経常収支は、国際的な企業が国内での収益を金融危機に際して海外に送金した事から、前月の 11.2億米ドルから27.7億米ドルの赤字と五ヶ月ぶりの水準に広がりました。一方で海外直接投資は 62.6億米ドルと1995年1月の統計開始以来2番目の水準となっております。

ロシアルーブルは、8年ぶりとなる週次ベースでの下落を第一週に記録したのち、一度は2006年4月以来となる水準にまで下落したのち反転したものの、月次ベースで9年半ぶりの対ドル安となる -5.6%を記録しました。今年は既に 9%下落しております。
ロシアルーブル建ての株式指数である Micex 指数は30%下落し、30年政府債の取引金利水準も7年ぶりの高さとなり(債券価格では下落)、この10月で720億米ドルが国外に流出したのとの試算もあります。また、原油価格の下落も対ドル安の要因の一つとなりました。

ロシア政府は、1998年に起こった400億米ドルのソブリン債務の債務不履行の経験から、2000億米ドル以上を使い流動性を供給しました。中央銀行は今月、過去最高となる 400億米ドルを売る事で政府が管理している通貨バスケットを下支えしました。

世界的な信用収縮が起きている一方で、ロシア国内では、減速しているものの貸し出しは引き続き拡大しておりますが、国内の企業の1/3が金利の上昇により借り換えが出来ず、債務不履行になる可能性があると言われております。

ロシア国内の銀行間翌日渡貸し出しレートである MosPrime 銀行貸し出しレートは 20日に過去最高となる 21%を記録しました。

外貨準備残高は今年1月末のレベルである4847億米ドルにまで減少し、一週間で 310億米ドルも減少した週もありました。この週の減少は今年最大のものでしたが、そのうち150億米ドルが通貨防衛の為に使われ、50億米ドルも国営の開発銀行の危機回避の為に使われました。金融システムの維持と銀行救済の費用が膨大になりつつあることから、格付け会社ではロシアの長期債務に対する格付けの見通しを安定的からネガティブに引き下げました。

ロシアの年末での GDP成長率は、世界的な信用収縮の影響による資本の海外逃避と原油価格の減少から 7.3%と昨年の 7.8%から減速するものと予想されております。9月までの9ヶ月間で 7.6%でした。また、9月の生産者価格上昇率は年率換算で 25.7% と、8月の 31.6%から予想以上に減速しました。9月の鉱工業生産成長率も年率換算で 6.3% と、8月の 4.7%から上昇しました。インフレ率も9月に過去五年間で最も高い15%を記録しました。

インドルピーは、週次ベースで1997年以来の大幅下落となる -2.94% を記録し、また11ヶ月ぶりとなる8営業日連続での下落の結果、27日に対ドルで過去最安値となる 50.29を記録しましたが、その後、国内株式の反転に伴って対ドル高に転じて1.7%回復したことから、月次ベースで 5%の対ドル安で10月を終えました。ルピーは年初来から既に20%下落しております。国内株式の指標となるセンセックス指数も、24日に16年ぶりとなる日時ベースで11%の下落を記録するも、最終週に 2001年4月以来となる週次ベースで12.5% の上昇率を記録して3年来の最安値から反転しました。

インドの外貨準備残高は 2584億米ドルとなりました。過去最大となる一週間で 155億米ドルの下落を記録しましたが、これはドルの対ユーロや対円の評価減によるものである一方通貨防衛にも使われたものと見られております。

格付け会社スタンダードアンドプアーズによるインドの長期債務格付けは、他のアジア各国に比して世界的な減速の影響をあまり受けず、国内需要を背景として力強い経済成長が今後のビジネス環境の改善により支えられる事が予想されることから格付けを維持する事を発表しました。

インドのインフレの指標となる、卸売価格指数の上昇率は、消費者の需要の衰えと商品価格の下落により月中に継続して減速し、18日の週で年率換算で 10.68%と、5月以来の11%を下回る結果となりました。インフレ懸念が後退した事で金融政策も政策金利の引き上げから据え置き、さらには引き下げも視野に入り、予想外にレポ金利も20日に2004年以来初めて1%引き下げられました。一方、工業生産成長率は8月、1.3%と前月同時期比の 7.4% を大きく下回り、統計を取り始めた 1994年以来最も低い成長率となりました。記録的に高金利に消費者による消費が抑えられたものと見られております。

インドも、ブラジルやロシア同様、国内の金融機関にもとめた預金準備金比率を5年ぶりに 9%から、7.5%、そして 6.5%に引き下げる事で資金を投入し、金融危機の回避につとめました。

中国人民元は、7日に7ヶ月ぶりに高騰を見せたものの、24日に月中のそれまでの上昇率をその日一日で失うほどの下落を見せ、さらに月中に 2ヶ月ぶりの対ドルで安値をつけましたが、3週間ぶりの高値をつけるといった動きを見せた結果、月次ベースで 0.13%の上昇と、過去2ヶ月の下落から反転しましたが、今年前半の6.6%の上昇に比べて、それ以降は未だに 0.2%の上昇に留まっております。政府が通貨取引幅を狭める事で輸出業者のサポートを行い、また経済成長の減速を押さえようとしているとの観測があります。

貿易黒字は欧米での輸出の減少から年初9ヶ月で 3%減少した 1800億米ドルを計上しております。
輸出は前年同時期比で21.5% 増の 1364億米ドル、輸入も 21.3%増の 1071億米ドルで、単月での貿易黒字は 293億米ドルでした。輸入は銅や原油の価格が下落した事から前月同時期比 23.1%増からの減速となりました。


景気の拡大・後退を判断する製造業購買担当者指数 (PMI) は10月、44.6 と前月の 51.2から大きく50を割り込みました。この数値は 2005年7月に導入されて以来最悪の数値です。世界的な景気減速による海外への輸出縮小と工業生産品へ需要の減少により、9月までの経済成長率が過去5年間で最も遅いペースとなっていることを受けて、景気のハードランディングを避けるべく、政府は国内のインフラへの投資へのてこ入れや、29日の引き下げを含む過去二ヶ月で3回の金利引き下げ、輸出優遇措置、不動産取引税の引き下げ等をおこないました。

経済成長率は第三四半期に9%と低下傾向にあり、また、鉱工業生産伸び率も9月が過去6年で最低でした。小売販売伸び率は 23.2%上昇しましたが、これは過去9年で最も高い伸び率でした。生産者物価伸び率は 9.1%と前月の 10.1%から減速しました。インフレの指標となる消費者物価上昇率は 4.6%と8月の4.9%から減速傾向にある事を示しております。

不動産価格の上昇は、過去3年で最も伸び率の低い 3.5%に留まりましたが、都市部での固定資産投資は年初9ヶ月で 27.6%の増加と8月までの 27.4%からわずかに上昇しました。

外貨準備残高は史上最高額となる1兆9060億米ドルに達しました。

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