BRICs Watch - July 2008

4/27/2009
(注) この記事は2008年8月28日の記事の再録です。

ということで、やっと書き終わりました(笑)
数ヶ月前とかを思うと、あんなにイケイケだった(死語)BRICs も一気に
下降局面に入るのか?!と、思ってみつつありますが、

確かに株は駄目ですねぇ。でも、世界的に駄目だから仕方ないですよね。
7月にブラジル株も下降局面に入りましたが、その前に既に
MSCI 世界指数に含まれている先進国 23カ国中 カナダだけが 下降局面に入っておらず
MSCI 新興国市場指数に含まれている新興国 25カ国のうちヨルダンとモロッコだけが
下降局面から免れている、という事態ですので推して知るべし、というところでしょう。

なので、BRICs 株式ファンドは苦しいだろうなぁ(苦笑)
よかった、うちのファンド、為替リンクで(笑)

でも、インフレと金利、というあまりに景気に左右される(している)割に
大きな動きのないファクターが、じわじわと国の政策や方向性に影響しているのが
見て取れるので、為替というのも案外面白いのかもしれません。

と、考えたとき、日本の現状って、どうなのでしょうか。インフレに突入しそうなのにしない。
それは原材料の価格上昇を生産者や企業が吸収しているから、ということに他ならないはずなのですが
企業とて収益を失うはずなので痛んでいくはずで、漁業などで見られる一斉休業はその最たるものの
はず、なのですが、家計、という点だけでみて、消費者価格への転嫁が暗黙に拒絶され続ける社会システム。

なんか、健全なのかどうなのか、わからなくなる瞬間です。

7月の BRICs はインフレ抑制と経済成長の維持、というある意味そう反するテーマに対して、国益としてどちらを優先するか、という選択を迫られていた月でした。

ブラジルレアルはインフレが加速することで中央銀行が政策金利を引き上げるものとの見方から対ドル高基調が進み、7月中に1999年 1月以来の対米ドル高の水準となる 1米ドル 1.5600レアルの水準に到達し、1ヶ月でも 2.4%上昇しました。

インフレは 7月中旬までの 12ヶ月で 6.3%に上昇しております。これは過去 32ヶ月でもっとも高い水準であり、2008年のインフレ目標である 2.5%から 6.5%の間から外れる可能性が出て来たことから、これを受けて中央銀行は 23日に政策金利を 0.75%という予想外に大幅な引き上げを行い、13%としました。国内需要が所得と信用の両面で増加し、引き続きインフレの大きなリスクとなるものと見られており、年末までに 6.58%まで上昇すると予想されていることから、今後も政策金利を引き上げるものと予想されております。その一方で、個人の所得や信用が増加したことから個人消費が増加しており、それを見込んだ海外からの中小規模の地方都市へのショッピングセンター等の投資が増加しています。

消費者物価、卸売価格、建設価格の指標となる IGP-M価格指数は 7月の1ヶ月では6月の 1.98%の上昇と比べて減速した、1.76%の上昇でした。製造業は引き続き原油や大豆といった原材料の上昇を吸収することで商品価格への転嫁を押さえていますが、指数の 6割を占める卸売価格はトウモロコシなどの2桁での上昇に伴って 2.2%の上昇でした。消費者物価は前月の 0.89%から 0.65%と減少しました。月末に商品市場の価格の減速が見え始めていることから今後数ヶ月間で更なる減速も予想されます。

株式市場は、ボベスパ指数が6月までは主要20カ国で最も上昇した指数でしたが、6月に10%下落し、また7月に入って3%以上下落しました。これにより5月の最高値から 20%以上下落したことになり、いわゆる下げ相場に入ったと見られています。MSCI エマージング市場指数の 25カ国のうち 23番目にこの下げ相場に入りました。6月にはインフレ懸念を嫌って、過去5年で最大額となる46億米ドルの海外資金の純流出も起こりました。

ブラジルの7月の貿易黒字は6月の 27.2億米ドルから増加し 33億米ドルに。輸入が 6月の 159億米ドルから 171億米ドルに増加した一方で、輸出も 186億米ドルから 205億米ドルに増加しました。他方、6月までの6ヶ月間の経常収支は 174億米ドルの赤字と記録的でした。企業が収益を海外に持ち出していることが要因と見られている一方で、外国直接投資がこの6ヶ月で 272億米ドルと経常赤字を補えるだけの海外からの資金流入が起きています。

ロシアルーブルは米ドル 55%・ユーロ 45%の通貨バスケットに対して、0.58%対バスケット高と、昨年の 9月以来最も大きく対ドル高が進み、また5月の中旬以来インフレ緩和と投機目的取引の減少のために緩和された値幅制限一杯に取引がなされました。背景には投資家がロシアの高利回り資産の調達に動いたことが見られています。対ドルでは0.2%の、対ユーロでも 0.9%のそれぞれの上昇でした。
ロシアの指標金利の 11% はユーロの 4.25%、ドルの 2%、円の 0.5%に対してキャリートレードの対象になっていると見られています。ルーブルが1%バスケット通貨に対して上昇すると、インフレが 0.3%減速するという試算がなされています。

6月のロシアのインフレ率は5月に引き続き年率 15.1%と、5年半ぶりの高水準を維持しました 。エネルギー価格と食品価格の増加が主要な原因と見られていますが、一方、消費者物価は 6月に 1%の上昇を見せた一方で 7月 28日までの4週間で 0.5% と減速傾向になっていることから、7月のインフレ率は 14.9%に減速するものと見られています。他方、生産者価格の指標となる工場および鉱山出荷時商品価格の上昇率は 6月に 3年半ぶりとなる 年率 28.1%に達しました。

インフレ懸念を受けて、11日に中央銀行は指標金利であるリファイナンス金利を 1年半ぶりの水準である 11%に引き上げました。金利引き上げは今年4回目でエネルギー価格の急騰と資本流入によるインフレ上昇にともなう物価調整を目的として行われました。

外貨準備残高は 5923億米ドルに達しました。

インドルピーは昨年の10月以来となるおよそ 1.1% の対ドル高を記録しました。原油先物価格が 2006年9月以来となる一ヶ月間で 10%値下がりしたことから、全国のエネルギーの3/4を原油に依存するインドにとって、原油取得の為のドル需要が軽減されたことの影響が大きいと見られています。また、年初から7月29日まで海外のファンドによる株式売買は、68億米ドルの売り越しとなっていますが、株式市場の好転により海外ファンドの国内資産の売却が押しとどめられているとも見られています。付け加えて、日本の製薬会社による現地製薬会社の買収も押し上げる原因となりました。

7月19日の週の卸売価格は前年同期比 11.98%上昇と、6月14日の週の 11.42%上昇以来11%台を維持し、インフレが1995年以来の早いペースになっております。ガソリンだけでなく食用の豆類や果物類、香辛料や砂糖等の価格の上昇を受けての上昇と見られております。

中央銀行はインフレの抑制の為に、政策金利であるレポ金利を 0.5%引き上げて 9%とし、同時に、預金準備比率も 8.75%から9%に引き上げることでさらに緊縮金融政策を進めることを示すことで、来年の5月に総選挙を控えての従来の経済成長優先からインフレ抑制を優先する路線に方向転換しました。金利引き上げは二ヶ月で3回目で、合計 1.25%に登ります。

格付け会社の S&P はインフレが加速し、政府支出が増加することで財政赤字が拡大する場合、現在のインドの格付け、投資適格格付けの最下位にある BBB-を引き下げる可能性を示唆しました。 フィッチも同様に格付け見通しを「安定的」から「弱含み」に引き下げました。

6月の輸出は146.6億米ドルと前年同月比で 23.5%増と前月の 13%から大幅に伸びを見せました。最大の輸出先であるアメリカでの需要の減速に対応して、ヨーロッパや日本、アジア諸国への輸出を各企業が加速させたことによります。輸出も 244.5億ドルと前年同月比 26%増となり、貿易赤字は97.8億米ドル広がりました。原油の輸入は 53.4%増加しましたが、原油以外の輸入は 14%の伸びに留まりました。

中国人民元は対ドルで引き続き上昇しましたが、今年前半の平均月次上昇率が 1.07%であったところ、上昇率が 2007年 3月以来で最小となる 0.33%に留まりました。2005年以来のペースにまで経済成長が鈍化していることを受けて、当局が上昇のペースも鈍化させているとの観測が広がりました。また、当局にとって消費者物価の抑制と経済成長の維持はともに最優先課題であるなか、中国の経済成長は第二四半期までの12ヶ月で 10.1%と、第一四半期末の10.6%や昨年一年間の11.9%からは減速しておりますが、2月に8.7%と11年ぶりの高水準となったインフレ率を 6月には 7.1%まで押し下げた要因として、人民元の上昇が輸入コストを押し下げたものと考えられております。当局が貿易黒字の縮小に向けて人民元の上昇ペース加速を促すとの観測が広まる一方で、25日に中央テレビが報じたところによれば中国共産党の政治局はインフレ抑制と安定的で比較的速いペースでの経済成長を望んでおり、最優先課題を景気過熱阻止から成長維持に変更したことが示唆されており、輸出企業を支えるため、人民元の上昇ペースを鈍化させるとの観測が強まっております。

外貨準備残高がホットマネーの流入等を含めて6月末時点で 1兆8100億米ドルを超えて前年同期比 36%増加する一方で、輸出は昨年通じて 25.7%の成長率であるところ今年前半で 21.9%と減速傾向にあるように主な輸出先であるアメリカへの輸出需要が弱まる中、10四半期連続で10%の成長率を支えるように世界で最も急成長を遂げていることから、格付け会社 S&P は中国の長期債務の格付けを A+ に格上げしました。

1-6月期の対外投資は前年同期の3倍となる 257億米ドルに達しております。政府が国内企業に海外展開を促しておりますが、貿易や海外からの直接投資、人民元上昇を見込んだ投資資金の流入による金融市場の過剰流動性を抑制することにも寄与しています。一方、外国直接投資も1-6月期で 524億米ドルと、前年同時期比45.6%増加しておりますが、中国への虚偽の申告等による違法な資金流入は1-6月期で 1620億米ドルに達していると目されており、ホットマネー対策も効果が薄いと考えられており、18日には、海外直接投資に関する更なる規制の強化も発表されました。

貿易黒字は、第二四半期末で輸入コストの増加とアメリカでの需要衰退により 581.4億米ドルと前年同月比12% の減少しました。6月の輸出も、前年同月比 17.6%増と5月の 28.1%から伸びが鈍化しており、単月での貿易黒字も前年同月比 20.6%減となる 214億米ドルでした。これにより 3ヶ月連続の減少となりました。輸入は 31%増でした。

近い将来のインフレの指標とも言える生産者価格の動きは、6月の時点で前年同月比 8.8%の増加と、5月の 8.2%からさらに加速しております。消費者物価指数も、食品価格の落ち着きから5月の7.7%から 7.1%にまで低下していますが、商品相場の上昇から高止まりが見込まれ、また中央銀行の目標である 4.8%に対しては依然上回っております。
都市部の固定資産投資も、1-6月期で前年同期比で26.8%の増加と、1-5月期 25.6%を上回っておりますが、不動産価格は前年同月比 8.2%上昇と、そのペースが 10ヶ月ぶりの低水準に留まっております。

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