お金について思うあれこれ : 政策と税金と投資行動

4/24/2009
(注)この記事は 2005年9月21日の記事の再録です。

自民党の大勝で終わった選挙も一週間経つと、大分過熱気味だった国内も
落ち着いて来た感があるのですが、そこで、誰も口にしないことを
いくつかあげておきたいなぁ、なんて思います。

実際、これは選挙中に書こう、と思いつつも見事に書きそびれたので
後だしじゃんけんに見えるものの、今回の選挙の争点に全くならなかった
ことのなので、ご容赦ください。

選挙前に、自民党(言い換えれば国会)の税制調査会の方針で
「サラリーマン増税」
という話が持ち上がりました。
簡単に言えば、累進課税率の引き上げとか、そんな話だったと思います。
で、それに対して当然の事ながら、
複数の野党から一斉に反対の声があがったと記憶しております。

さて、私も当然サラリーマンを狙い撃ちにした増税には反対です。
かの石原都知事が大手銀行への外形標準課税の導入に対してあったのと同じで、
税の負担の公平感という観点で反対意見が出て当然ですし、
また、納税の観点で徴収しずらい企業からではなく徴収しやすいサラリーマン
からもっととる、という安易な考えから来ているだろうこの提案にはいかがなものか、
という思いがあります。

しかしながら、この問題の根本として、働く人のインセンティブ、と、
そこから税収を増やすいう観点で、大きな欠陥があることに気づいていない
調査会の浅はかさが露見している、ということを指摘したいと思います。

これは、そもそも、累進課税というルール自体の欠陥でもある訳ですが、
収入の多い人と少ない人とで、公共サービスのコスト負担に格差がある、
ということ自体、まず問題があると思います。
考えてみましょう。公共サービスは誰もに公平に提供されるもの、とされている
にもかかわらず、そのサービスのコストは収入の多い人ほど負担額が大きい、
言い換えれば、収入の多い人ほど公共サービスの対価が高くなる、ということが
今現在起きているわけですが、この「公平に」ということに、この現実が即していない
ということがわかる訳です。

実際、累進課税でなく、一律の税率を課したとしてもこの不均衡はなおるものではなく、
この問題を解決するには人頭税を導入しない限り不可能だというのは、かけ算と足し算さえ
わかれば明白な事です。

所得税が相続税のように富の再分配を意図した税金でない以上、かかるコンセプトで
課税していること自体に問題があり、この結果、次のような弊害を現在生み出している
ことがわかります。

まず、課税前に支出をコントロールする事の出来る私企業、特に日本の多くが零細企業であり
これは私人とほぼ同一である状況である訳ですが、彼らの収入、すなわち税前利益は、
支出にてかなりコントロール出来る上、法人税が個人の所得税の税率と現時点で同じ程度であることを
考慮するならば、明らかに零細企業していたほうが課税所得を圧縮できる分だけ優遇されている
といえるわけです。

言い換えれば、(幾ら控除項目が多岐にわたろうとも)サラリーマンは源泉徴収される
時点から自分の所得に対してガラス張りにさせられ、事実上経費という経費は存在せず、
みずからコントロールする間も与えられることのもなく搾取されているのです。

とした場合に、まだ、一律であればましではあれ、累進課税になった瞬間、
場合によっては税前収入は増えても税引き後では減収になるという現実を
目の前にして、収入を増やすことと税金を払うことが天秤に掛けて、収入を増やさない、
要は一生懸命働くことをやめる、という選択肢をとるサラリーマンが増えてもおかしくないのです。

言い換えれば、課税する側は既存の収入体系に網を掛けて増収を目論むところでしょうけれども、
収入を増加させるという勤勉に対するインセンティブをあからさまに根こそぎ引き抜いて、将来に
対する税収の芽すら摘んでしまっているわけです。

これは、崩壊前の旧ソ連や北朝鮮のような共産主義と一種似たような世界観を
作り出しているのです。そう
「自分が働かなくとも、人が稼いでくれるからそれにすがり付けばいいや」
です。みんながそれをやったがために滅びた国の数々を思い出してみましょう。

それに、賢い人であれば、サラリーマンを続けずにフリーランスとなって自分を零細企業化して
増税を免れる、ということもするでしょうから、増収を目論んでいる高収入
サラリーマンの数を減らすことにすらなるのです。

さて、こんなこと、政治家は絶対に先頭を切っていいません。
なぜか。世に言われる 80:20 の法則によれば、20%の人が80%の収入を得ていて、
80%の人が20%の収入を得ている(この「収入を得ている」、は「貯蓄を蓄えている」に
置き換えても正しいらしい。。。)ことをかんがみれば、数の多いほうの利便、要は、
「稼いでいる人から吸い上げればいいじゃない!」
といったほうが、浮動票たるサラリーマンの大半のハートをわしづかみに出来るからです。
そうなると、さらに一生懸命稼ごうとする人は、国外に収入や財産を動かしたり、
インセンティブを失って社会への貢献をあきらめることになるのです。
亡国の徒と言われても、亡国が彼を守らなければ出て行くのは当然です。

ということで、税制は単に国の財布を握るだけではなく、消費税の増税による
買い控えなんていう簡単な例にも漏れず、国民の行動すら左右するものですから、
もっと慎重に検討すべきものだと思うのは私だけではないはずですし、
私たちは税制についてはもっと勉強すべきなのだと思います。

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