イスラム金融について考える
(注) この記事は 2008年9月15日の記事の再録です。
とかく、金融というものはいろいろなしがらみや制約の上に成り立つものです。
当事者たちの権利義務の為に整備されたはずの法制度にがんじがらめになってみたり、
投資効率を勘案すると税法の網の目に引っかかってみたり、
関与する関係者の間の、収益分配やその後の取引へのもくろみといった利害関係に
自由な選択肢が取れなくなったり、などなど。
でも、今日、知人の弁護士事務所が開催したイスラム金融と日本の法制度/税制に関する
ディスカッションボードに参加して、新しい制約、宗教観、というものに出会い
ストラクチャラー魂的にはくすぐられる一方で、もう少し単純にならんかい、と概念論者として
頭を抱えて帰ることになったのです。
最近、イスラム金融という言葉自体、日本国内でもだんだん耳にする機会が増えて来たのだとおもいます。
一つは、投資資金の停滞に伴って、現在原油等で潤っていると言われる中東の資金が、ヨーロッパから
その投資先を分散しつつある中で日本に来る、としたときの準備(inbound investment)、
もう一方は、その中東地域での油田開発といった、日本の技術提供以外の、資金的な関与を
行う際の現地金融機関との協調(outbound investment) をそれぞれ考えたときに、今までの
仏教やキリスト教では考えられないくらいの宗教観による支配下での金融の発展が
まさに、今まで私たちが見て来た世界と異なるように見えることで注目を集めたのだと思います。
しかし、よくよく見るとそうでもない、という側面が見えてくるのです。
話を煎じ詰めるとすれば
イスラム金融の世界では、基本的に
* 彼らの概念上、経済の基本は形のある「物」の所有や譲渡であり、またお金の貸し借りは形のないものなので寄付と同義として扱われる。
* お金は彼らの概念の中では「物」ではなく、「物」を測る尺度に過ぎない
従って、契約に従って実物の裏付けなくお金を貸し、そして、その代償としての金利を生み出す、ということは
概念の外のもの、という感覚なのでしょう。従って、すべての経済行為は物の譲渡や貸借の裏付けが必要になる
というものが基礎になってくるのでしょう。
それをふまえると、当然貸し付けという行為が存在せず、私たちの言葉で言うところの
単純な売買による一括資金決済
リースという形の賃借料
売買代金の分割での後払いや前払い
という、(私たちの概念では制限された)取引方法を駆使することになるのです。
また、投資についても戒律から制限が与えられていて
+ ギャンブルやアダルト・エンターテインメント
+ 豚肉などの食料品販売
+ アルコールの販売
+ 保険業
には投資できないそうです。まぁ、不動産の証券化でも、性風俗店に入ったビルは
確実に証券化できず、ラブホテルやパチンコはぎりぎりのラインでという世界でしたし
その昔、金利や為替の先渡し契約は賭博法(?)の規制ぎりぎりの商品という見方を
していましたから、何となくイメージできますね。
また、面白い(いや、ある意味厳しい)のが、投資スキームでシャリア・コンプライアント
(イスラム金融のルールに乗っとった)を求めるのと同様に、投資の結果買われた会社にも
シャリア・コンプライアントを求めます。なので Private Equity で買われた会社は 3年以内に
金利収入を 5% 未満に減らしたり、ローンもシャリア・コンプライアントなものに
する努力を求められるそうです。企業再生よりも大変かも(苦笑)
また、持っていない物を売る、という第三者売買も規制されているそうなので
# 所有権の考えが厳しいことから来ているそうです
借り株やってショートに振る
なんていう信用取り引きも出来ません。
また、実物がないといけないということと、上記の制限をふまえると、先物取り引きを含めた
デリバティブ取引もかなり大きく規制される訳ですから、シャリア・コンプライアントな
ヘッジファンドというのは、あるにはあるものの、ほとんどロング・オンリーで
レバレッジなし、らしいです(笑)
しかも、世の中よく出来ていて、DJ-Islamic Index なるものがあって、それは
(米国での)上場株のなかで、シャリア・コンプライアントな会社で作られる指数なのだとか。
ということは、そのシャリア・コンプライアントなヘッジファンドはそんな指数と戦う
ことになる、というか、それが investment space になる訳です。企業もそこに入れば
イスラムからのお金も集められる訳ですから資金調達の幅も広がる、と見ることも出来ますが
果たして、イスラム金融を無視して生きていけるのかどうなのか。。。
なんにせよ、実際の案件がないと更なる考察には入れませんが
知恵比べという意味ではやってみたいものです。
誰かそんな仕事くれませんか?(笑)
とかく、金融というものはいろいろなしがらみや制約の上に成り立つものです。
当事者たちの権利義務の為に整備されたはずの法制度にがんじがらめになってみたり、
投資効率を勘案すると税法の網の目に引っかかってみたり、
関与する関係者の間の、収益分配やその後の取引へのもくろみといった利害関係に
自由な選択肢が取れなくなったり、などなど。
でも、今日、知人の弁護士事務所が開催したイスラム金融と日本の法制度/税制に関する
ディスカッションボードに参加して、新しい制約、宗教観、というものに出会い
ストラクチャラー魂的にはくすぐられる一方で、もう少し単純にならんかい、と概念論者として
頭を抱えて帰ることになったのです。
最近、イスラム金融という言葉自体、日本国内でもだんだん耳にする機会が増えて来たのだとおもいます。
一つは、投資資金の停滞に伴って、現在原油等で潤っていると言われる中東の資金が、ヨーロッパから
その投資先を分散しつつある中で日本に来る、としたときの準備(inbound investment)、
もう一方は、その中東地域での油田開発といった、日本の技術提供以外の、資金的な関与を
行う際の現地金融機関との協調(outbound investment) をそれぞれ考えたときに、今までの
仏教やキリスト教では考えられないくらいの宗教観による支配下での金融の発展が
まさに、今まで私たちが見て来た世界と異なるように見えることで注目を集めたのだと思います。
しかし、よくよく見るとそうでもない、という側面が見えてくるのです。
話を煎じ詰めるとすれば
イスラム金融の世界では、基本的に
* 彼らの概念上、経済の基本は形のある「物」の所有や譲渡であり、またお金の貸し借りは形のないものなので寄付と同義として扱われる。
* お金は彼らの概念の中では「物」ではなく、「物」を測る尺度に過ぎない
従って、契約に従って実物の裏付けなくお金を貸し、そして、その代償としての金利を生み出す、ということは
概念の外のもの、という感覚なのでしょう。従って、すべての経済行為は物の譲渡や貸借の裏付けが必要になる
というものが基礎になってくるのでしょう。
それをふまえると、当然貸し付けという行為が存在せず、私たちの言葉で言うところの
単純な売買による一括資金決済
リースという形の賃借料
売買代金の分割での後払いや前払い
という、(私たちの概念では制限された)取引方法を駆使することになるのです。
また、投資についても戒律から制限が与えられていて
+ ギャンブルやアダルト・エンターテインメント
+ 豚肉などの食料品販売
+ アルコールの販売
+ 保険業
には投資できないそうです。まぁ、不動産の証券化でも、性風俗店に入ったビルは
確実に証券化できず、ラブホテルやパチンコはぎりぎりのラインでという世界でしたし
その昔、金利や為替の先渡し契約は賭博法(?)の規制ぎりぎりの商品という見方を
していましたから、何となくイメージできますね。
また、面白い(いや、ある意味厳しい)のが、投資スキームでシャリア・コンプライアント
(イスラム金融のルールに乗っとった)を求めるのと同様に、投資の結果買われた会社にも
シャリア・コンプライアントを求めます。なので Private Equity で買われた会社は 3年以内に
金利収入を 5% 未満に減らしたり、ローンもシャリア・コンプライアントなものに
する努力を求められるそうです。企業再生よりも大変かも(苦笑)
また、持っていない物を売る、という第三者売買も規制されているそうなので
# 所有権の考えが厳しいことから来ているそうです
借り株やってショートに振る
なんていう信用取り引きも出来ません。
また、実物がないといけないということと、上記の制限をふまえると、先物取り引きを含めた
デリバティブ取引もかなり大きく規制される訳ですから、シャリア・コンプライアントな
ヘッジファンドというのは、あるにはあるものの、ほとんどロング・オンリーで
レバレッジなし、らしいです(笑)
しかも、世の中よく出来ていて、DJ-Islamic Index なるものがあって、それは
(米国での)上場株のなかで、シャリア・コンプライアントな会社で作られる指数なのだとか。
ということは、そのシャリア・コンプライアントなヘッジファンドはそんな指数と戦う
ことになる、というか、それが investment space になる訳です。企業もそこに入れば
イスラムからのお金も集められる訳ですから資金調達の幅も広がる、と見ることも出来ますが
果たして、イスラム金融を無視して生きていけるのかどうなのか。。。
なんにせよ、実際の案件がないと更なる考察には入れませんが
知恵比べという意味ではやってみたいものです。
誰かそんな仕事くれませんか?(笑)
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