ボスがやっと帰って

この一週間は、本社からボス(CEO)と同僚が来て、日本のお客さんやビジネスパートナー等と面談する機会をたくさん頂きました。
いや、普段、国内に居ても電話やメールでのやり取りがほとんどになっていることから、本当にお会いいただいて、いろいろとお話しさせていただけて光栄です。特に国内の話をしていただくと、

同じ事を私がいっても聞かないけどお客様の声なら聞く

という、どこの会社でも見られる光景が弊社でも。。。(苦笑)
そのおかげで、来年の出張先にルクセンブルクが加わりそうですが(笑)

さて、そんな中、じゃあ、弊社側からのお土産で話をさせていただいた事の一つをちょっとご披露しようかな、と。


リーマン・ショック以降、世界的に

ヘッジファンドが今回の不況の引き金を作った

という風潮になっており、どこの国でもこれに対する規制を策定して導入しよう、という流れが出来てきています。このこと自体は、それ以前から、特に投資資金が OECD 諸国からOECD 諸国に流れるときの中継国としてのオフショア諸国(この投資資本のハブ&スポークの考え方は従来からあったものの最近になってやっとOECD諸国も自分たちもその利益を享受していることに気づき始めているようです。ちなみに、日本でよく言われる外国投資家の大半はケイマン等のオフショアを経由してくる日本国内の投資資金、と言われています。)ではいろいろと導入されていましたが、OECD諸国でも更なる規制に動いています。その中で、EUは、というと、実は今年のはじめからEU各国で選挙が始まり、また、近頃も EUの大統領も決まった事のように、政治的なイベントがある中でこの不況の打開策として政治的なアプローチを掲げて選挙に向かう国が多く、その結果、ヘッジファンドは悪、ヘッジファンドが不況の根源のスタンスからいわゆるオルタナティブ投資/代替投資全体に対して政治家からこの投資に対する規制、というより正しくは指令(Alternative Investment Fund Manager Directive) のドラフトの策定が進められています。

実は、このオルタナティブ投資には、ヘッジファンドにイメージされる、たくさんの借り入れをしながら投資額を増やし(レバレッジを掛ける、といいますね)、かつ株を借りてきて売りから入る投資を行う、だけでなく(ちなみに、平均的なこんな株式運用するヘッジファンドの平均的な借り入れサイズは、投資家から集めた資金と同じくらい程度、と言われています。ちなみに、通常銀行経営は世界規模で行うならば、投資家から集めた資金に相当する資本金の 11.5倍まで借り入れる事が出来ますので、ヘッジファンドが巨額のローンを振り回していた、というのはあまり適切ではなく、実は銀行などのほうがレバレッジ運用がすごいことになっている、という見方もあります。)、経営に行き詰まった会社に投資して立て直すようなプライベート・エクイティや、立ち上がったばかりの会社に投資するベンチャー・キャピタルのようなものも含まれるのですが、すぐに株の売り買いやその価格の評価が出来るものばかりではない、にもかかわらず、同じような取引や価格に対するスタンダードを求めていて、EUのベンチャーキャピタルファンドの業界団体等が再考を求めているのです。

その中で、EUの投資家を保護する為に、EU各国がその国内のファンド・マネジャーを監視監督する必要がある、との観点から、EUの投資家はEUのどこかの国による規制・監視下のマネジャーにのみ投資できる、というルールを入れようとしているのです。

ここで、一つのケースを考えてみましょう。
ヨーロッパのA社の現在のヘッジファンドへの投資内容が全部で 50ファンドあります。この会社の投資対象は世界経済全体とする事で分散を目指しますので、とすると、必然的に 49ファンドがケイマンになり、残りの一つは国内になるそうです。もし、上記のようなルールが施行されたらどうなるでしょう。これはすなわち、ヨーロッパの投資家からの投資を求める為にEUの外に拠点を持つファンド・マネジャーは、EU内に当局からファンドビジネスの規制を受けるための会社をわざわざ作らねばならない、ということを意味するわけですが、ファンド・マネジャーにとっては二度手間以外のなにものでもなく、そうなると、EU内の投資家向けファンドを作るときには、当然にその会社の維持費用もファンドに上乗せすることになります。ちなみに、その費用は。。。総額で 70億ユーロになると試算されています。また、そのコストを避けるようなことをファンド・マネジャーがするかというと、どうも近頃あったパリのカンファレンスで言われた話によれば、そんなことはどうもない空気にあって、

「それは EUの投資家の問題だから、EUで解決すべきことだ」

というのが総意のようです。
いいかえると、年金等、一般の人のお金を預かるEUの投資家のため、といっている規制が実は投資対象を狭めて EU 内にお金を留めさせて投資リスクを高めさせたり、不要なコストを強いられる結果を招きそうなのです。なので、投資家の側からは当然に不満の声が上がっているそうです。

ちなみに、日本の場合、金融商品取引法によって、海外のファンドが国内の投資を受ける場合には募集する前に当局に商品の届け出を求めると同時に、その運用者自身も日本の当局に届け出をする必要がありますが、まぁ、これは世界中のファンド・マネジャーから総スカンをくらっています(笑)そりゃそうです。自国以外の規制を受けると言う事は、その国の法律などを届け出する時点だけでなくその後も継続してモニターして満たさねばならないのですから、幾ら海外にいれどもその管理コストは最終的には投資家に跳ね返ってくるのです。まぁ、日本の機関投資家様は安さ第一ですのでその管理コストをファンドマネジャーに負担を求めている訳ですが、果たしてマーケットの健全性と言う意味で業者を泣かせ続けることで彼らの適正な会社運営が出来なくなるリスクを負わせ続けるのが正しいのか疑問といいたいところである一方、そのおかげで Japan Feeder を組成することでファンド・マネジャーに降り掛かるはずの、かかる法的リスクを回避する機会の提供する私の仕事が成立する訳ですが。。。(苦笑)

ということで、適性で適切な規制が好ましいのですが、少なくともこの EU に関しては実務のわからないポイント稼ぎ狙いの、いわば某国の現政権と同じような体質の政治家による主導なのでどうなる事か。。。ちなみに、Alternative Investment Manager's Association というヘッジファンドやプライベート・エクイティのマネジャーの業界団体もみんなでお金を出し合って対抗するロビー活動を行っています。そう、既に費用と労力と言う意味でのコスト負担は始まっているのです。

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