たぶん読むような人はいないと思うから書いちゃうけど

6/30/2011
最近、とある個人向け投資信託商品のアイデアをあれこれ考える機会を頂いていて考えてるのですが、考えれば考えるほど、これって個人に売っていい商品なの?と、思えてきたので、ちょっとメモがわりに。

ちなみに、こんなことを考えるのは、私が決してなれない、洗練された頭脳の持ち主の集団である、投資銀行のストラクチャラーやマーケター、ファンドアドミのマーケターやクレジットオフィサーといったプロ、が普通なのですが、そんな人たちには当然解ってる事である以上に、こんな場末のコンサルのブログから拾ったなんて、プロとして恥ずかしくて人に告白する事も、それこそ拾い読みして覚えたなんてプライドが許す筈もないので(笑)そういう同業関係者は来ても読まない、という前提で書きますので、そこんとこよろしくです。



さて、プロがいないと言う前提ですが、話は結構分かりづらい話が出るので少し覚悟を。

今、巷でよく見る投資信託商品の大半は、所謂「通貨選択型」と呼ばれるものですが、この商品、そもそも一体何かと言うところから始めましょう。投資信託というと、普通は預かったお金でルールに従って株なら株、債券なら債券を買ったり売ったりして、毎日いくらだったか評価して、返してと言われたらその時の結果に合わせてお返しするのですが、日本の投資家だと一般的には日本円で投資が始まるので、もし売り買いしたい株や債券といった「資産」が、例えばアメリカのものならば米ドル建てなので、

(1) 預かった日本円を一旦米ドルにして
(2) その米ドルで資産を売買して
(3) 毎日米ドル建てで評価して、その米ドルでの総額をその時のドル円レートで日本円換算して円建てでの投資の評価をして

で、(2) と(3) を毎日毎日繰り返して

(4) 投資家から返して、と言われたらその時の円建てでの持分に合わせた米ドル建て資産を売却して、得られた米ドルを日本円に変えてお返しする

という流れになります。

ということは。
普通に考えると、仮に(2) のプロセスを最初の一回だけ行って、あとは毎日(3) の評価だけを繰り返した場合、米ドル資産の変動と共に、ドル円レートの変動もこの投資信託商品の資産評価の要因になる、というのは、まぁ、分かりますよね(笑)

で、企業さんの財務の方なんかだとお分かりだと思いますが(と、わざと言ってみますが)、米ドル建ての売り上げや支払いの将来の為替変動リスクを抑えるために、将来のある時点での為替レートを今この時点で決めてしまう為替の先渡し取引を結んで為替レートをこの瞬間に確定してしまおう、ということをしますが、同じように、ファンドの資産も為替の変動リスクを抑えるため、ある程度の期間、例えば、一ヶ月先の為替の先渡し契約を繰り返すことになります。

が、企業さんのキャッシュフローの為替変動リスクを抑えるのと違って、ファンドの場合には幾らキャッシュフローが出たり入ったりするか想像つかないですし、また仮にキャッシュが入ったり出たりしなかったとしても本業であるポートフォリオが儲かって増えたり損して減る訳ですので、今日約定した一ヶ月後の先渡し契約の元本を明日増減させたりして調整しながら為替のリスクを軽減させなければならないという手間がある訳ですが、まぁ、それはそういうものだと理解して頂くとして、ここでのポイントは、例えば一ヶ月後の先渡し契約は実際にドルを渡して円をもらってしまう訳ですが、それを行うにはポートフォリオのドル建ての資産を売っぱらってドル建ての現金にしないといけなくなるので、それでは困るので、通常は、先渡し契約の受け渡しの時点ですぐに受け渡すドル買い円売りの約定を入れる事で、例えば円建てでの差額としての損失や収益を確定して(それがドル建ての資産の円貨で見た場合のヘッジの結果としての損益になる訳ですが)その分だけ先渡し契約した相手と決済して、また次の1ヶ月先の先渡し契約に入る、というのが現実的な実務になる訳です。

さて、ここでこの為替の先渡し契約だけを純粋に見た場合、一ヶ月後の決済を約束する契約ですので、この手の契約を締結する相手方、通常は銀行さんですが、にしてみれば、一ヶ月後に必ずドルを払ってくれるかどうか、ということが気になります(実際には差金決済するのでその差金決済の勝ち分を払ってくれるかどうかにリスクが限定される、という見方もありますが)。もし手前でのドルを渡して、というアクションまで考慮すると、渡したドルを返してくれるか、という一ヶ月のローンを行っているのと同じに見る事が出来て、そうすると、相手が一ヶ月間信用できる相手かどうか、という観点で銀行側がみている、ということが出来ます。(じゃあ、銀行側は円を受け取って、一ヶ月後に円を返すから、その履行は?という疑問があるかもしれませんが、自分が返す事についてそんなことを銀行は自分がつぶれるなんて考えません(笑)

さて、となると、相手が普通の企業ならば何かを担保にしてお金を貸したり、もしくは財務状況や融資の背景を考慮して無担保で貸す代わりに金利を高くする、などすることを信用調査部あたりが考える訳ですが、相手がファンドの場合、無担保で貸そうという人はほぼ皆無で、何か担保をおいて欲しい、というのがごくごく(いわゆる2008年の秋以降の今時の)一般的です。

似たような例として、お金を借りる、証券を借りる、というと、ヘッジファンドあたりは預かったお金を、そういう貸し借りをしてくれるプライムブローカーに担保として差し出して、それを元に貸し株を受けてショートポジションを作ったりお金を借りてレバレッジを掛けたりします。何も持たない人には何も貸してくれない、のがある意味プロの世界なのです。

話を通貨選択型商品に戻しましょう。
通貨選択型商品はというと、ドル建ての有価証券のポートフォリオのヘッジという目的でドル売り円買いのヘッジの為替先渡し契約を行うところを、ドル売り円買いではなくドル売りのペアとして豪ドルなど高金利通貨を買っている訳ですが、その先渡し契約を締結する為には何か担保が必要になる、というのは上記の話の流れからは容易に想像がつくと思います。ちなみに、驚いた事に、国内の運用のプロですら、自分たちが為替やりたいから、といえば無担保でやらせてくれる、と思っている会社さんがあるというのを最近聞きました。ネームだけで無担保で出来るなら、それはそれで羨ましい話ですし、そういう銀行を相手に探す能力があるとしたらそれもそれで羨ましいのですが、今時はさすがに。。。と思うのは私だけではないはずです。少なくとも上に書いた事がわかっちゃった人には(笑)

では担保は何かといえば、ドル建ての有価証券ポートフォリオの中身の証券、という事になります。というのも、出来るだけ買えるだけ買って運用するのが投資信託のお仕事ですので現金が適宜残っているということはほぼない状況にあるので、代わりに投資信託にある資産を担保に使わざるを得ない、ということになるのです。

で、どの世界でも一緒だと思いますが、ものを担保に取る場合にはその流動性や兌換性、発行体の信用リスクなどを考慮して担保の価値を評価して、常に担保の原資産の価値を補う事が出来るようにしたいと銀行は考えます。国だって担保取るときには同じように考えますしね。なので、G7 国債は100%で見てもらえるでしょうし、事業法人さんの社債は価値の 8割、株なら 5割、などのルールで評価がされると予想できます。

まぁ、今悩んでいるのは、そんな担保資産にこれら以外なにが使えるのか、というところを考えているのは仕事上の悩みです(というと、何を考えているかはプロはわかると思うけど、良い子のプロは読んでいないはずだからわからないよね(笑))が、実はここで一言言いたいのは、外貨建ての資産のヘッジ、という名目で為替の取引をポートフォリオに追加しているのは、実は投資元本と同額のレバレッジを掛けているのと同義なんじゃないかと。確かに有価証券への投資と別の目的にそのレバレッジ分が使われているので見た目は2倍になっていないから狭義の意味でレバレッジじゃないぞ、いうのは事実なんですが、とはいえ、ドル売りレアル買いって、為替リスクをドル建てからレアル建てに変換しているだけ、というか 1倍の FX を通常の資産運用を目一杯やっている横でやっているのと同じなんですよねぇ。

なので、通常の資産運用で発生する利金に付け加えて、FXでやっているキャリートレードの結果のスワップポイント分だけ毎日キャッシュをもらって、それを原資にして毎月分配をしている、けど、対円で見た場合の元本の変動リスクが本来のポートフォリオの価格リスクとは別の動きで存在している。これって本来の公募向けの投資信託に対する、レバレッジを入れてはいけないなどの商品設計上の規制に引っかからないのかなぁ、と思った訳ですよ。

まぁ、この手の商品が世に送り出されて2年経っているのでそうではない、という認識で当局も市場関係者も認識しているんでしょけど、それこそプロがちゃんと公募のファンドの投資家のリスク耐性とかキチンと考えて作ったのでしょうしね。

まさかね(笑)

-- iPadからの書き込みでした

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