投資信託の報酬の内訳(サービスの価格と考え方、の続きに代えて)

落合さんとのコメントのやり取りがだんだんヤバい方向になってきたので
# ごめんっ、最後のコメントは非公開にさせてくださいな。
# 多分誰も見ていないブログではあるけど、あらぬ誤解と感情の荒立ては避けたいので。。。
# ちなみに、販売する側も商品選択という観点から責任を負うので
# その観点から、適切なフィーレベルの商品を提供するのがその責を全うする
# という考え方も成り立つので一概に言えない、とだけ(大人な)コメント。

ちょっと、数値から見た分析をしてみたいと思います。

ちょうど私がホーチミンに居たときに手にした日経の16ページに
「点検 マネーの常識」という連載記事があって、そこで取り上げられていたのが
「信託報酬の使い道は」ということで、投資信託の期中手数料の使い道について
投資家の目でみてどうなのか、という、我々業界全体で見ると耳の痛い話がありました。

そう、基本的に手数料が高ければリターンも高いか、ということは全くないのです。
ちなみに、手数料の高い運用者は運用のためのリサーチ等のコストを負担してもらい
ベンチマークとなる株式指数等を上回る運用を目指す、ので、もし過日の記事をみるならば
ウォーレン的にも、運用の世界で一般に言われるようにも、

アクティブ運用は市場(指数運用)に勝てない

ので、安価な 指数連動のETF でも買う方が、というもっと頭の痛い結果に流れそうなのでここらで止めるとして、本筋に話を戻すと、日本の投資信託において信託報酬と呼ぶときには、資産保全のための受託者である信託銀行に支払われる報酬という狭義の信託報酬を示さず、資産運用(投資信託の受託資産を元に行う売買を判断・執行)する運用会社や販売の際の窓口となり期中の運用を日々の値動き等とともに投資家に連絡する販売会社への報酬をも含めた広義の信託報酬を指します。この記事によれば、大体このうち 47%が運用会社、販売会社が 48%、 残りの5%が信託銀行に、ということのようです。ちなみに、アクティブ運用のファンドですとたいてい1から2%くらいがこの信託報酬の相場のようですので、平均 1.5% として話を進めるならば、そのうち 0.70% が運用会社、0.72% が販売会社、残りの 0.08% が信託銀行に、という計算になります。

もしおまけの話をするならば、いわゆる私募投信としてのヘッジファンドですと、運用会社に 2% (に資産上昇分の 20% のインセンティブボーナス)、信託銀行に相当する機能に 0.10%から 0.15% くらい、販売会社は。。。案件により、と言う感じですので、元々の日本国内の投資信託のストラクチャーが安価なマーケットに出来上がっている、という見方もできます。

話を戻して、記事によれば、2008年度に野村総合研究所が運用会社 17社に対して調べた運用会社のコスト構造として、
システム・本社系におよそ 32%
営業・マーケティングにおよそ 26%
基準価格の算出/精査を行うバックにおよそ18%
運用/調査/トレーディング部門におよそ 17%
リスク管理などのミドルにおよそ 7%
と、単純化すると内分けられるそうですので、ガバナンス機能の提供にあたる部分は。。。
このうちのミドルと本社系の一部、言い換えると 7% にちょっと足したくらいだから、 0.70 の 7%って。。。0.049% をわずかに上回る程度、と言うことになるようです。

ちなみに、一般的なリスク管理は市場リスクの管理を指すでしょうから、その意味で弊社の提供する点と直接的には異なるとみることが出来、出来れば本社系の内訳が手に入るともっと精緻な分析ができますが、ここでは、コーポレートガバナンスの機能の一部でも提供していますので比較のためにこちらを使うとします。

さて、この 0.05%と言う数字ですが、国内投信のケースで考えてどうか、というと実は私の会社で提供している、仕組み債連動商品を国内投信のストラクチャーで提供する場合の市場レベルが同じ程度、のようです。ただし、国内投信のストラクチャーの場合、運用会社は国内ストラクチャーレベルでは対象資産となる単一の資産を持っているだけ、という単純に見える仕事ではある一方で、実は行政の指導により、保有する資産であるファンドなどの運用者の監視/監督義務を負う必要があるため、既に見た目以上の義務とリスクを負っていると分析する事も可能です。

以上が、サービスとその対価としてどう評価するか、という一つの目安として考えられるもの、ではあるのですが、上記が国内ストラクチャーからたどっているので、私の会社が提供している海外籍の投資信託にこれが丸ごと当てはまらねばならない、ということではない、と思う一方で、国内投信での同種のストラクチャーとそのフィー体系を踏まえるならば、投資信託という大きな枠組みとしては無視出来ないことでもあるのが事実です。

このように考えた場合、欧米での現在の資産運用の流れという視点から考えると日本の市場においてコーポレートガバナンス機能への評価は残念ながら低い、という結論にたどり着かざるを得ないのかもしれません。その背景としては、多分に日本で求められる受任責任のレベルが当然に高いものであり、その理由として伝統的な銀行を中心とする金融規制業務への行政の要請の高さと、これは常々主張している話ですが、証券化商品などのストラクチャー商品などで求められるパッシブ管理という概念が日本の金融にとっては比較的新しいことから、プロアクティブな管理が基本的な枠組みとして考えられて、その基準の中でのサービスの提供が求められていることに起因しているのかもしれません。

そう考えると、ゲームの中にいるのだから、その枠組みで戦えないならゲームから降りるべし、という声も聞こえてきそうですし、もう一点、大事なこととして、自分たちの経験値、というところがあり、そこを考えると赤字を垂れ流してまで続けて、納得して信頼してお付き合いいただいている既存のお客様に迷惑をかけることが果たして得策なのか。なかなかビジネスは考える事が多くて面白いものです。(面白いというと不謹慎にみえますが。。。)

2 件のコメント:

ochiai さんのコメント...

荒らしてすまん。。。

現状で国内では高コストと捉えられていても、ビジネスとして成り立っているのなら、必要とされているわけだから、未来は明るいねぇ。

こちとらドサ廻りでニッチな商売頑張ります。

Shinobu さんのコメント...

荒らしっつーか、ある意味私の本音を書いてくれてるので助かる一方、さすがに社会的体面も無い訳ではないので(苦笑)

うーん、実はもっと別の切り口で比較する方法があって、最近よく世の中で取り上げられている投資商品としての ETF っていうのがあるんだけど、あちらのほうが私の会社のようなニッチなファンド・サプライアにしてみれば脅威、なんですよねぇ。商品性がマスリテール向けで流動性も高く、かつ指数運用だから同じようなビジネスモデルでかつフィーも安い。

10年同じビジネスモデルが生きながらえるとは思っていない自分も居る中で、誰もが認める価値とその創造、とその対価というのは何だろう、と自問するいい機会ではありましたが。。。

その意味で、私もどさ回りでニッチな商売をがんばります(笑)

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