なぜ、金利を下げると、貸せる人が減るのか

4/25/2009
(注) この記事は2006年1月29日の記事の再録です。

なんて話を、前回の記事でまじめに書かなかったのですが、
金融をしている人だとわかるものの、そんな人ばかりではないですし、
借りてる側にしてみれば

「下げてよぉ!」

という気持ちが先に走るので、そうなるとなぜ自分が借りられなくなるのか、
というのが見えづらくなるような気がするので、ちょっと説明してみようかと思います。

ちなみに、私は消費者ローン業界とは何の縁もゆかりも今はありません(笑)し
彼らの肩を持つつもりもありません。単に、金利引き下げが世の中をよくするなんて
間違った幻想が横行していることが許せない、それだけです。


さて、あなたは100億円の消費者ローンを貸すローン会社だとします。
業界で平均して一人頭25万円貸しているといわれているので、お客さんは
だいたい 4万人くらいいる計算になります。

今の消費者ローンの金利は出資法で決められている 29.2% が上限で、
だいたいこれくらいで(消費者ローンもクレジットカードも)貸している
ので、みんながちゃんと返してくれればあなたの会社は利子で 29.2億円
稼げることになり、その利子から従業員の給料やシステムのコスト、果ては電気代や
家賃までまかなうことになります。

しかし、全員が返してくれる訳ではありません。

私の知っている頃で、自己破産が年間 20万件くらい起きていて、
消費者ローン業界の平均貸し倒れ率、返してくれない率、は9% 程度だったと記憶しています。
言い換えれば、100億円のうち 9% が利息どころか元本も返してくれないのです。
そうすると、前述の計算がちょっと変わり

(100億 - 9億) x 29.2% = 2,657,200,000

ざっくり 26.6 億円の収益と 9億円の貸し倒れ損失の計上で、
正味 17.6億円の上がりになります。
これが(コストを払う前の)消費者ローン会社の姿、だというのがわかります。

もし、前回の話のように金利が引き下げられるとなったとき、
例えば、利息制限法と出資法の隙間のグレーゾーン金利の問題を解決すべく
出資法の金利上限を 18% にまで引き下げたとしましょう。そうすると

(100億 - 9億) x 29.2% = 1,638,000,000

と、年間の収益が16.4億と9億円の貸し倒れ損失となり、上がりが 7.4億円になります。

さすがにあなたが会社のオーナーならば、ローンするのはボランティアではないので
もっと効率よく稼ぎたい、と思えてくるでしょう。そうなったときにコントロール
できる部分は、貸し倒れ率を下げる、というところです。言い換えれば、貸出先を
もっとちゃんと返してくれる人に貸すようにする、ということです。

なぜか、人件費を下げる、システムコストを下げる、というのは
そもそも売り上げが減っているのだから、当然進めている訳ですし、
誰も、返してくれない人に進んで貸すような、人権主義ではないのです。
それ以上に、貸し倒れまでに掛かる人手や時間といったコストは
借りる側が思っている以上に掛かるのですから、出来ることなら
そういった「事故」には貸すほうだって会いたくはないのです。。。

さて、もっと返してくれそうな人、というのはどういうことでしょう。
例えば、返す資金の担保がしっかりしている人、要はちゃんとした会社に
勤めているいる、とか(しっかりした銀行にお勤めの人が消費者ローンに走る
場合、それはかなり深刻だからということで貸してもらえません(笑))、
安定した年収の金額が大きい、とか、そういうことです。

もうお分かりですね。本当に必要なはずの低所得層というのはリスクが高いと
見なされて、返せるかもしれないけれども、怖くて貸せない、となってしまうのです。

お金を貸している人たちは、商売でやっています。
とすれば、法律で上限金利を下げるのならば、自分たちを守るために
貸し出す人をもっと選ぶから、その結果、あぶれた人は合法で貸してくれる
人から借りられなくなって、非合法なところからしか借りられなくなる、
ということなのです。

それでも、まだ下げるべきなのでしょうか?

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