幻想が自身を打ち砕く? - 市場は誰が動かすのか?

4/26/2009
(注) この記事は 2006年10月26日の記事の再録です。

最近、といっても、よく考えてみれば去年の9月くらいからの繰り返しには
なっているものの、市場が奇怪な動きをしている、と言われています。


円安に乗じて外国投資家の資金流入と、上げ相場に乗じようとする個人投資家の資金流入で
モメンタム相場になったのが昨年の9月くらいから今年の1月のライブドアショックまで。
あの直前に日経平均先物のとある証券会社の大口ポジションが買いから売りに反転した翌日に
ライブドアショックがやってきて、信用取り引きしていた個人が腰砕けになった。
しかし、あれは証券会社の自己勘定だけではなせる技ではないらしい。


一旦落ち着いたもののそのあとの市場もファンダメンタルが効いているようでどうもしっくりこない。
で、ついこの間も、突然ファンダメンタル的には想定外らしい、いくつかの特定銘柄の売りが重なったらしい。
マーケットの噂では外国籍のファンドの大量解約に対応するための資金作りのためとか。

さて、確かにファンドが市場を動かしている、とはいうものの、そのからくりとは。。。

1990年代から、いつしかヘッジファンドは悪の権現のような言われ方をすることが
多かったのですが、その一つに、振り回す資金の大きさが市場に対する影響を多大に
与えてることが上げられます。それもそのはず。

古典的(!)なファンド(ヘッジファンド的に言うなら、レバレッジなしのロングオンリーファンド)
と典型的なヘッジファンドとの大きな違いは、前者が現物を振り回すので、資金を 100預かったら
100しか市場で振り回すことができないのに対して、典型的なヘッジファンドは、レバレッジ、
要はローンを受けて株を借りて信用取引をガリガリする訳ですので、例えば 100預かったときに
ロングサイド(買い持ち)で 200、ショートサイド(売り持ち)で 200の、預かり資金の 4倍の
影響を市場に与えることになるのです。

とはいえ、ヘッジファンドがまだそんなにメジャーな投資手段でなかった頃はまだよかった。
なぜか。周りは巨大戦艦みたいな年金資金や機関投資家の資金が飛び回っている隙間をぬって
小さな小舟が普段より長い櫓をこいでいるようなものですから、立つ波も巨大戦艦にとっては
何の影響もないくらいでしょう。また、IT 革命を迎える前の 90年代までは、
そういった古典的な投資手法の投資家の巨大な資金の行き来の中で出来上がる市場の価格形成
プロセスには、情報の不均一が存在する時間と空間が小回りのきくヘッジファンドにはたくさん
あった、ともいえるでしょう。


しかし。
その結果生み出した脅威のリターンという数字の幻想が、多くの新興ヘッジファンドマネジャーを
生み出し、機関投資家も古典的な市場のリスクと独立したリスクを取ることでポートフォリオの
安定化をするのにもってこいのヘッジファンドに資金をまわし始めるきっかけを作り出したのです。

その結果、IT革命によって個人レベルでも多くの情報に瞬時に(そして安価に)アクセスすることが
出来るようになり、情報の時間的空間的偏在という状態がきわめて限定的になったところで、
それらを武器にしたヘッジファンドマネジャーが増えたことによって市場のゆがみがとどまる時間と
空間までもが狭められて結果、収益機会が減ってしまったのです。
また、レバレッジの効果のおかげで、ヘッジファンドの資金が急速にそのプレゼンスを大きくしていき、
市場への影響すら強まる結果になってしまったのです。

さらに言うならば、例えば株式のロングショートファンドと言ったときに、あのファンドマネジャーと
このファンドマネジャーが違う方向にポジションを持つということはたまにあるものの
# ファンドオブヘッジファンドで持っている二つのファンドがこうなると二つ合わせた結果の
# ニュートラルポジションの為に運用コストを払っていることになるので
# 結構腹が立つ場合もあるのですが(苦笑)
たいていの場合、割安や割高の計算の結果など同じようにしか出ないのですから
みんなで同じ方向に向いていることになります。
ということは、儲けは山分けされてしまうし負けたときにはみんなで総崩れということになるので、
売りたくても売れず、買い戻したくても買い戻せないで傷口が広がることにもなるのです。。。


ところで、その影響が顕著に現れるのはヘッジファンドへ投資していた人が抜けるときです。
とある人が 100投資したとしても、マネジャーはその 100をいきなりロングショートに振って
400 分のポジションを作る訳ではありません。市場へのアクセスの際に均衡した市場への
影響を最小限に抑えることで効果的な投資を行いたいと思うのが常ですので、資金流入の
影響が出ないレベルでゆっくりとポジション構成を行いますので資金が入ってきたときは
さほど問題ではないのです。

しかし、投資家が出て行くときに支払わねばならない資金は、投資の条件に規定した期間で
素早く作り出さねばならないのですが、ファンドを設定する時点でも投資家に資金を
返す際のリードタイムはポジションの資金化を行う際のめどとの兼ね合いで決めるものの
いざ実際となれば予定通りに事が運ぶとは限らないのです。例えば市場が大崩れして
上記のようにみんなが同じ方向にポジションを持っている場合ですと反対サイドの
逆ばりのポジションを取る人がいないので、ポジションを外すことができないまま
悪い値段に落ちていく、なんてことは容易に想定できるのです。しかも、レバレッジのかかった
ポジションですから市場に対するインパクトは、ネットでは0かもしれませんが
レバレッジがかかる分、グロスの大きさ、いわば4倍で影響するのです。


さて、いつの頃も、儲けというのは市場参加者が少なく整備されていないときが
いつもおいしく、時間の経過とともに儲ける余地が減っていくものだと言われています。
ヘッジファンドも、古典的な投資から比べれば代替的なリスクの取り方をする投資では
あるものの、もう既に旧来的なリスクではないリスクを取る投資方法に過ぎなくなってきている
のかもしれませんね。

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