どうしても紹介したかった本

4/26/2009
(注) この記事は 2006年5月5日の記事の再録です。

この数ヶ月、book review がぴたりと止まってしまっていました。
# これに限らないのですが。。。

というのも、どうしても今のこの時期に読み返して紹介したいと
思っていた本があって、きっちりと読み返していたのです。

その本は、全部で 650 ページ以上にわたって、日本のこれからに
役立つヒントを教えてくれそうな気がしてならなかったので、
時間をかけて読み返していました。

それは。。。


この本と私が最初に出会ったのは、まだ Citibank に在籍していた 1997 年で、
当時、外国為替リンクの仕組み債を管理しながら、外国籍投資信託の国内への
持ち込みのビジネスに携わり始めた頃だったと記憶しています。
そのとき、当時籍を置いていた子会社証券会社の社長さんから
80年代のアメリカの金融市場とその結果の話を聞いていたこともあり、
この本はその側面から見ても興味深い知識を与えてくれました。

その側面とは、金利の低下に伴って、個人の住宅ローンの乗り換えが進んだこと、
それに伴ってローンの期限償還が大量に発生して、それを裏付けとしていた
Ginnie Mae と呼ばれる証券化商品の期限前償還が連動して起こり、
預かり資産に対する金利支払いのために投資先に窮して、Ginnie Mae を
保有していた多くのS&L、貸付組合の収益構造に直撃して破綻に追い込んだ、
というストーリーです。
この大きな背景とは、普通のアメリカ人が、住宅ローンを返済せずに借り換える、
というメンタリティと、金利に敏感になっていた、と言う二つの要素があることが
わかりますが、読む前まではアメリカと日本との貯蓄率の違いなどをふまえて
そういうものだろうと、ぼんやりと見ていた感があった記憶があります。

この本では、ごく普通のアメリカ人の金融商品に対するものの考え方の
段階的な変化とその背景が著実に描かれています。
驚くなかれ、1950年代においてはアメリカの中流家庭においては
預金すること、ローンは最小限にすることが美徳とされていた、というのです。
それが、銀行を守るレギュレーションQ を打ち破るためにつくられた MMFや CMA
といった証券会社の金融商品を入り口とする株式投資への導入と金利市場の動向であったり、
ミューチュアル・ファンドとそのスター・ファンド・マネジャーの作り出した
投資に対する羨望と、IRA や 401k プランと言った個人による投資を国が
押し進めるという制度の整備、州を越えて業務を展開できない銀行が拡大する過程で作り出した
クレジットカードというローン商品への、半ば強制的とも言える啓蒙であったり、
これらのすべてが重なり合って、中流アメリカ人の生活概念などを変えていった、
と言えるのだと思います。

さて、今日本で様々な金融商品を取り巻く問題が起きています。
消費者金融やクレジットカードによる自己破産、超低金利のよる運用難、
個人投資家による株式投資や不動産投資のブーム、などなど。
そして、量的金融緩和政策の終了の先に見えているインフレーションと金利上昇の不安。
アメリカの、この本に書かれている 30年の間では上は 20% 近くから下は 2.5% まで
金利が上下動しました。そのとき、アメリカで普通の人たちが何を考えてどう動いたか。
そして、それを見て金融サービスに携わる人たちがどうしたか。オンライン証券や
投資信託などは既に日本でも導入されているものの、人の行動パターンなどは
参考になるものであり、また、市場に対して不連続な規制というのものが、
最終的には、如何に普通の私たちに不利益を与えて、自由競争を妨げたのか、
という実例を見ることができます。

そうです。私たちは過去から多くを学ぶべきなのだと思いました。
その意味で、この本は私たちの明日の一部を見せてくれているのかもしれません。

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